第1四半期のGDP成長率は1.8%、3月は新型コロナの影響で減速

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年05月13日

経済発展省は4月29日、ロシアの2020年第1四半期の実質GDP成長率を前年同期比1.8%と発表した(添付資料表参照)。小売商品売上高の伸びが顕著で、製造業も好調だった一方、貨物輸送が足を引っ張った。他方、3月の成長率は前年同月比0.9%と1~2月に比べて鈍化した。要因として、原油価格の下落、新型コロナウイルス感染症の拡大防止措置の導入を背景とした世界経済の減速が挙げられる。

小売売上高は前年同期比4.3%増となり、第1四半期の成長を牽引した。3月は前年同月比5.6%増で2014年12月以降で最大の伸びとなった。このうち、自動車販売はルーブル為替レートの下落により、3月には4.0%増加した(2020年4月16日記事参照)。ロシアの政府系金融機関であるVEB.RF(対外経済活動銀行)付属研究所マクロ経済部のオレグ・ザソフ氏は「3月の小売売上高の急激な増加は、外出禁止措置導入前に食料品や必需品の駆け込み需要が起こったことが原因」としている(VEB.RF付属研究所5月6日発表)。

鉱工業生産(前年同期比1.5%増)の成長を牽引したのは製造業(3.8%増)で、化学、食品、木材、非金属製品、コークスや石油製品などの分野が好調だった。化学分野では医薬品の増産が行われた結果、2月に前年同月比10.6%増、3月に9.1%増の大きな伸びをみせた。一方、鉱業は世界的な原油需要低下を背景に、3月に1.7%減となった。鉱業の不振は貨物輸送にも影響し、3月には7.1%減と過去5年間で最大の落ち込みになった。

所得面では、1月、2月ともに実質賃金が上昇した(前年同月比6.5%増、5.7%増)。失業率が低い水準を維持していることが背景にある。一方、ローン金利の支払いの増加により、実質所得と実質可処分所得の差は拡大している。

ザソフ氏は、新型コロナウイルス感染症拡大によるロシア経済への影響について、「第1四半期においては海外市場の縮小が主因だった。ロシアにおける外出禁止措置など各種制限による影響は、第2四半期に生じうる」とコメントしている(VEB.RF付属研究所5月6日発表)

今後の経済見通しについて、世銀は2020年通年の実質GDP成長率をマイナス1.0%(2020年4月13日記事参照)、IMFはマイナス5.5%、ロシア中銀はマイナス4~6%(2020年4月30日記事参照)と予測している。

(加峯あゆみ)

(ロシア)

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