第4弾の新型コロナウイルス経済支援パッケージ、雇用確保が焦点

(シンガポール)

シンガポール発

2020年05月28日

シンガポールのヘン・スイキャット副首相兼財務相は5月26日、2020年度政府予算(2020年4月~2021年3月)の補正予算で、総額330億シンガポール・ドル(約2兆5,000億円、1Sドル=約76円)規模となる法人、個人向けの新型コロナウイルス経済支援パッケージを発表した。政府が新型コロナウイルス経済支援パッケージを発表するのは4回目。第1~3回目の支援総額599億Sドル(注1)を加えると、2020年度の政府支援は合計で929億Sドルと、同国GDPの19.2%に相当する。

ヘン副首相が冒頭、「本予算のフォーカスは雇用だ」と強調した通り、国民の雇用確保が焦点となった。今回、国民の雇用維持支援「雇用サポート・スキーム(JSS)」の適用を拡大した。従業員の月給25~75%分を補助する同スキームの対象期間をこれまでの9カ月間から10カ月間に延長する。6月2日からの職場再開第1段階目で、営業を再開できない業種の雇用主に対しては、最長8月まで月給の75%分を補助する(注2)。また、国民の採用インセンティブとして、政府指定の職業研修を終えた40歳以上の国民を採用すると、給与の20%を6カ月間補助する「中間キャリア・サポート・パッケージ」に関しても適用を拡大した。40歳以上の国民については給与の40%(月給上限1万Sドル)を、40歳未満については給与の20%をそれぞれ6カ月間補助する。

さらに、企業の経営コスト支援として、低・中熟練外国人労働者の雇用主に課される外国人雇用税の免除と払い戻しを7月まで2カ月延長する。2021年1月から実施を予定していた高齢労働者の中央積立金(CPF)の雇用主負担の引き上げを、2022年1月へ延期。このほか、中小企業を対象に商業物件の賃料支援を、不動産会社を通じて2カ月間支給する。その他、法人、個人向け支援策の詳細は、政府予算のホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

1965年の独立以降、最大の財政赤字額の見通し

政府は4回目の支援パッケージの財源として、過去の準備金から310億Sドルを取り崩す。新型コロナウイルスの影響による経済対策で2020年度の政府の財政収支は743億Sドル(GDP比15.4%)の赤字と、1965年の独立以来最大の赤字額となる見通しだ。

同国で5月26日までに確認された新型コロナウイルスの感染者は累計で3万2,343人(うち、1万6,444人が回復、8人が重篤者、23人が死亡)となった。

(注1)最初の新型コロナウイルスの影響に対する経済支援パッケージ(2月18日発表、2020年2月27日記事参照)の規模は総額64億Sドル、2回目が総額484億Sドル(3月26日発表、2020年3月27日記事参照)、3回目が総額51億Sドル(4月6日発表、2020年4月7日記事参照)だった。

(注2)雇用サポート・スキーム(JSS)の内容拡充の詳細は国税庁のホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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