連邦政府、民間投資による新型コロナ経済復興推進を模索

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年05月07日

連邦政府は4月22日、「プロ・ブラジル計画」を発表した。これは、新型コロナ感染拡大で打撃を受けた経済の復興計画で、元陸軍参謀本部長であるブラガ・ネト大統領府官房長が提案した。

同計画では、年間300億レアル(約6,000億円、1レアル=約20円)におよぶ公共事業や、2,500億レアルにおよぶ民間企業とのコンセッション契約によるインフラ投資を集中的に行い100万人の雇用を創出することなどが明示されている。同計画は、発表前からブラジル版マーシャルプランと呼ばれていたが、ネト官房長は、景気対策だけでなく「経済や社会の成長の基盤となるインフラを高度化するもの」と強調している。

ネト官房長は、全省庁の総意をもって同計画に取り組むことを期待していたが、22日の計画発表の場には、要となる経済省代表者の姿がなかった。経済省が公共事業拡大に難色を示しているからだ。経済省にとって公共事業の拡大は、「経済への干渉を少なくし、民間企業の力による経済発展を志向する」という新自由主義に反する上、新型コロナ緊急経済対策で財政赤字が急増しているためだ。パウロ・ゲデス経済相は計画の必要性を認めつつも、財政支出上限を維持・尊重し、民間投資へのインセンティブを促進すべきと考えている。

一方、公共事業推進派は、民間部門が後退する中では「公共事業が必要で雇用創出に欠かせない」と主張。両者で意見が対立していた。ボルソナーロ政権下では昨今、保健相の解任(4月17日付記事参照)、法務・公安相の辞任(4月28日記事参照)といった要職と大統領との対立が続いており、同政権の要である経済相との対立を心配して株価と現地通貨が急落した。

ボルソナーロ大統領は27日、ゲデス経済相と並んでプレスを前に現れ「ブラジル経済政策の決定者はパウロ・ゲデス経済相ただ1人」であり「彼が我々の本来進むべき方向性、指針を示す」とあらためて同相へ信頼を寄せていることを明らかにした。

本計画は、財政支出を抑え民間投資を最大限に活かしながら取り組むことになった。専門家筋は、「計画具体化に当たり民間投資を引き受ける仕組みや計画の達成手段、評価方法を明確にする必要性がある」と評している。

(大久保敦)

(ブラジル)

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