ボルソナーロ大統領保健相を解任、新型コロナ感染対策で意見対立

(ブラジル)

サンパウロ発

2020年04月17日

ジャイール・ボルソナーロ大統領は4月16日、エンリケ・マンデッタ保健相を解任し、後任の新保健相にネルソン・タイシ氏を任命した。

ブラジルでは4月に入り新型コロナウイルス感染者と死亡者が急増している(最新値外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。感染のピークは4月から5月と予測され、保健省は自治体に対して人命保護の観点から広範囲な自宅待機措置を指導してきた。一方、ボルソナーロ大統領は高齢者など感染リスクが高い人に限定した自宅待機を主張しており両者の意見対立が続いていた。

ボルソナーロ大統領は新保健相任命発表で、「前保健相は医師として正しいと信じた広範囲な自宅待機措置を実施した。ただ、タイシ氏とは、国民の大半にあたる貧しい人々の仕事を再開させねばらない点を話し合った」と説明している。

タイシ新保健相はリオデジャネイロ州立大学医学部卒。90年代に統合腫瘍学センター(COI)設立に関与、腫瘍医として席を置いた。2010年以降は健康管理分野に重点を置き、リオデジャネイロ連邦大学(UFRJ)でMBA、英ヨーク大学で修士号を取得した。その後、健康管理コンサルタントとして働き、保健省の科学技術戦略投入局(SCTIE)を指導した。

新保健相は就任演説で、「これまでは、自宅待機離措置による影響について情報がほとんどないため広範囲な自宅待機措置が重要であるかのように扱われていたがそうではない。直近の正確な情報に基づき最善の行動を決定し、それを評価しながら最善の行動を実行する。情報が少ないほど感情的な議論になる」とこれまでの保健省の対応を批判した。また、タイシ保健相は就任演説で、自身の考えは大統領や全閣僚と完全に一致していることを強調。「できるだけ速やかに通常生活を再開できるよう取り組む」との方針を示した。

科学的証拠がないとして前大臣が投与に消極的だった治療薬クロロキンに関し新大臣は直接言及しなかった。ただ「ウイルス感染は必ず技術的、科学的な方法で治療されるべきで、現存するワクチンと治療薬は臨床研究で短期間に多くの情報収集を行うことが患者と社会の双方にとって効果の把握に役立つ」と付け加えた。

今回の解任に対する国民の反応はさまざまだ。感染が急拡大する中で、大統領による解任を批判する意見がある一方、雇用を守るための大統領の行動に理解を示す意見もある。

(大久保敦)

(ブラジル)

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