広東省の1~2月の生産・消費統計にみる新型コロナウイルスの影響

(中国)

広州発

2020年04月10日

新型コロナウイルス感染が拡大した2020年1~2月、中国では各地で外出規制や外出自粛が続いた。広東省でも新型コロナウイルスへの対応が長期化する中、防疫対策による経済への影響が大きく、生産・消費活動にはこれまでと異なる傾向がみられた。

広東省統計局が3月28日に発表した経済指標によると、1~2月の生産・消費はいずれも前年同期比で2桁のマイナスを記録した。一定規模以上(注1)の工業生産付加価値額は前年同期比23.2%減の3,287億2,300万元(約4兆9,308億円、1元=約15円)、社会消費品小売総額は17.8%減の5,636億1,100万元だった。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために実施した春節(旧正月)休暇の延長と長期間の外出規制による影響が大きかった。

医薬防疫物資などの生産が増加

ただし、生産・消費統計の詳細をみると、前年同期を上回った品目もある(添付資料参照)。

広東省全体の工業生産付加価値額が大きく減少した中、感染拡大防止に伴う需要急増により、医薬防疫物資が増産となった。特に、春節休暇明けの2月に急速に生産回復しており、1~2月のバイオ薬品、医療用衛生材料、医療用補助材料はそれぞれ前年同期比30.8%増、70.5%増、58.6%増と急増した。中でもマスクの増産は顕著で、広東省内では一定規模以上のマスクメーカーが増えて58社となり、生産量は2.8倍となった。

外出規制による買いだめなどで、コメや冷凍肉、野菜、インスタントラーメン、乳製品など生活必需品の食品の生産も微増した。

また、一部のハイテク製品も増加しており、3Dプリンター関連設備(2.3倍)、ワークステーション(業務用高性能コンピュータ)(60.7%増)、生産を停止しにくい風力発電ユニット(98.2%増)の生産額が急増した。

食品・薬品などの消費が旺盛

消費を形態別にみると、小売りが15.1%減、飲食(外食)が37.8%減と影響が大きかったことがうかがえる。

前年同期比で増加した品目をみると、食料・食用油は19.5%増と2ケタ増加し、影響は限定的だった。感染拡大防止に必要な医療物資のマスクやアルコール、消毒液、抗ウイルス薬品などは供給が需要に追いつかない状況が続いたこともあり、一定規模以上の卸・小売企業(注2)の薬品小売額は19.3%増、うち漢方薬は22.8%増加した。外出規制に伴うテレワークやオンライン教育の需要増により、パソコンやスマートフォンの販売も2桁増となった。

外出規制はネット消費をさらに活発化させた。一定規模以上の企業によるインターネットを通じた小売額は1~2月が18.0 %増、2月単月では56.9%増と大幅に増えた。

消費規模が広東省全体の2割を超える広州市は消費性向が高い。とりわけ「食は広州にあり」といわるほど美食の都市として有名だが、店内での食事が制限される中、インターネットでの注文が増加し(2020年2月19日記事3月26日記事参照)、1~2月の広州市のインターネットを通じた飲食業収入が43.3%増と急増した。

(注1)年間営業収入が2,000万元以上の工業企業。

(注2)年間営業収入が2,000万元以上の卸売、500万元以上の小売企業。

(盧真)

(中国)

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