金融市場監督庁、新型コロナウイルス対策のため暫定的に自己資本比率規制を緩和

(スイス)

ジュネーブ発

2020年04月08日

3月31日、金融市場監督庁(FINMA)は、新型コロナウイルスによる影響を緩和するため、バーゼル銀行監督委員会が策定した自己資本比率規制(いわゆるBIS規制)「バーゼルIII」(注)に対応する国内規制を7月1日までの間、暫定的に緩和するガイダンスを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同ガイダンスは、スイスの金融機関に対して、(1)政府の経済対策としての400億スイス・フラン((約4兆4,735億円、CHF、1CHF=約112円)のつなぎ融資(2020年4月7日記事参照)が100%または85%の政府保証により行われることから、政府保証がついている融資額については自己資本比率の計算上、リスク資産の計算から除外すること、(2)流動化促進のため、スイス中央銀行(SNB)に預けている当座預金額はレバレッジ比率の計算から除外すること、を認めるもの。ただし、(2)に関しては、本ガイダンス発表以降に株主向けに2019年の業績に基づく配当を行う場合にはその配当額分が流動化措置で認められた金額から差し引かれる。

4月2日付「ラジュフィ」紙によると、FINMAのマーク・ブランソン長官は、銀行に対し現在の経済環境に対応できるよう配当支払いを自粛するよう要請した。これは、配当を控えて内部留保を増やせばBIS規制が定める自己資本比率やレバレッジ比率を守りつつ、事業者に対する貸し出し額を増やすことができるためとみられる。FINMAは金融業界に対して自己資本に関する要求水準を引き下げることで、コロナ危機に対応できるよう前述のつなぎ融資に相当する資金流動性を与えているが、2020年3月25日以降に2019年の業績に基づく配当を決定した、もしくは決定を予定する銀行に対しては、流動化措置で認められた金額から配当相当分を差し引くとした。しかし、現在もUBSやクレディ・スイスは配当を行う姿勢を変えていないと同紙は報じている。

(注)バーゼルIII:日本の金融庁の2018年2月の資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、バーゼルIIIは、金融機関に対し、(1)リスク割引した債権総額に対する自己資本比率8%以上、(2)全与信額に対する自己資本のレバレッジ比率3%以上であることなどを求めている。

(和田恭)

(スイス)

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