AI搭載ロボットを内務省が外出制限令の監視役に採用、チュニジアのスタートアップ

(チュニジア)

パリ発

2020年04月06日

3月22日から自宅待機、必要最低限の店舗以外は商業活動禁止、学校閉鎖などの封鎖措置(2020年4月3日記事参照)が行われているチュニジアで、内務省は街頭での外出制限令の監視役にスタートアップが開発した最新人工知能(AI)搭載ロボットを採用した。アフリカで新型コロナウイルス対策にハイテクを活用する例として注目される。ロボットを開発・製造したエノバ・ロボティックスは首都チュニスから南方約145キロのスースで2014年に設立され、中東アフリカ地域で初とされる自社ブランドAI搭載移動ロボットを開発・生産・販売するスタートアップだ。同社のベン・ファラハット営業部長にインタビューした(4月2日)。

「今回活躍しているのは、フルHD赤外線カメラ4台、360度全方位赤外線サーマルカメラ、GPS、レーザー遠隔測定システムを搭載し、8時間の自律性を持つ「P—Guard」の2019年最新版だ。ミニ戦車のような容貌の地上監視ロボットで、内務省の防犯カメラシステムにつながっている。街頭をパトロールし、外出している人を見つけると接近し、遠隔から係員が外出理由を問う。同時に外出証明書と身分証明を提示させて、カメラを通して内容を確認する。

チュニジアでは新型コロナウイルスの世界的まん延と同国での感染者の増大に直面する中、医療部門とICTやメカトロに特化したテクノパークやスタートアップ、研究所などが協力してこの危機を乗り越えるため、テクノロジーを結集して具体的な対処方法を早急に生み出そうという動きが現れた。夜間外出禁止令の発令にともない、自社のロボット活用を内務省に提案したところ、採用が決定した。内務省は現在のテスト段階を経て、今後の利用価値を検討しているようだ」とファラハット氏は語る。

同社のロボットは本来、工場や製造現場などでの移動型監視ロボットとして開発された。過酷な環境にも耐え、人間が立ち入れない場所での情報収集に活用することが想定されていたが、新型コロナウイルスの感染拡大という非常時にあって予期せぬかたちで活躍の場が与えられた。

写真 路上をパトロールする監視ロボット「P-Guard」(エノバ・ロボティック提供)

路上をパトロールする監視ロボット「P-Guard」(エノバ・ロボティック提供)

(渡辺智子)

(チュニジア)

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