中央銀行が2020年の経済成長率見通しを引き下げ

(メキシコ)

メキシコ発

2020年03月04日

中央銀行は2月26日、2019年第四半期経済報告を発表し、メキシコの2020年の経済成長率見通しを従来の0.8~1.8%から、0.5~1.5%に下方修正した。中銀は下方修正の理由として、2019年第4四半期の経済が前期比マイナスとなり(2020年3月4日記事参照)、足元の景気減速感が払拭(ふっしょく)されていないことや、世界経済の不安定、特に米国の鉱工業生産の見通しの悪化、新型コロナウイルスのまん延がグローバルサプライチェーンに与える悪影響を挙げている。

また、中銀が3月2日に発表した内外38の民間シンクタンクによる最新の2020年経済成長率見通し平均値は0.91%となり、前月から0.09ポイント下がった(表参照)。民間シンクタンクが経済成長の阻害要因として挙げているのは、「治安の問題」(20%)、「国内政策の不確実性」(18%)、「国内経済の不確実性」(13%)など国内要因が多いが、「対外市場および世界経済の弱さ」を挙げる声も前月の4%から7%に上昇している。

表 政府、中央銀行、民間部門のマクロ経済見通し

経済指標の中で特に懸念されるのは、雇用環境の悪化だ。2月27日に発表された月次雇用統計によると、2020年1月の完全失業率は3.66%で、前月比0.50ポイント上昇し、2016年8月以来の高水準となった。また、過去12カ月間の社会保険庁(IMSS)加入労働者数の増加をみると、2020年1月末時点には31万6,386人となり、前月末比で2万5,691人、前年同月末比で32万5,448人少ない数字だ。2020年の正規雇用増として、中銀は44万~54万人、民間シンクタンクは43万人(平均値)を見通しているが、過去10年間のメキシコの経済活動人口の増加平均値が98万8,351人だったことを考慮すると、不十分な正規雇用創出だ。

企業家の投資マインドの低迷が続く

2019年の経済成長低迷の最大の要因は投資の減退だが(2020年2月4日記事参照)、2020年になっても企業家の投資マインドは低迷している。メキシコ雇用者連合会(COPARMEX)が発表する企業家投資信頼感指数は2020年1月時点で38ポイント(50ポイント超が投資に楽観的)となり、前年同月比で6ポイントも低い。また、KPMGが2月28日に発表した「メキシコ経営者見通し2020」によると、在メキシコの企業経営者1,036人のうち、2020年は「投資を差し控える」と回答した比率が16%となり、前年調査の8%から倍増した。同調査によると、81%の経営者が2019年に現政権が導入した政策が企業の競争力にマイナスの影響を与えたと回答しており、現政権の経済政策に対する不信感が表れたかたちだ。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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