ルソン地方封鎖で国内外物流に混乱

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月24日

新型コロナウイルスの国内の感染拡大防止のため、国内の人口の半数以上を占めるルソン地方全体への外出禁止令や公共交通機関の停止を決定したの発表(2020年3月19日記事参照)を受け、フィリピン国内で操業する日系企業からは、物流の混乱や操業一時停止に追い込まれるなどの声が聞かれる。

ジェトロが日系物流企業にヒアリングを行ったところ、ルソン地方閉鎖の一環で設置された検問所の審査が厳格で貨物トラックが検問を通過できずに引き返さざるを得ない事態が発生しており、政府の方針を見定めるべく貨物トラックのオペレーションを中断しているという(3月17日時点)。フィリピン港湾庁(PPA)は3月15日、マニラ港で輸出入貨物を運搬するトラックがマニラ首都圏の内外を往来する場合に、貨物車通行許可証(CEWP:Cargo Entry/Withdrawal Permit)の事前取得義務を課し(2020年3月17日記事参照)、その後3月17日付けで撤回(2020年3月19日記事参照)を発表するなど、政府方針が二転三転している状況だ。

食品の日系輸入卸売企業によると、輸入した豚肉を加工するためのフィリピン国内の加工工場が稼動していないため、海外からの豚肉輸入もキャンセルしている状況であるという。日本から食材をフィリピンに輸出する事は問題がないが、フィリピン通関が人員不足なのか手続きが進まない状況であるという。また、マニラを発着する国内便がキャンセルになっていることから、空路で地方都市へ食材を運べなくなっており、国内航路がキャンセルとなったため、海路の利用が急増し、マニラ首都圏及び周辺の港は混雑が高まっているとのことだ(3月18日時点)。フィリピン税関は3月17日、ルソン地方の閉鎖後も通関業務は通常通り実施するとの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行ったが、限られた人員体制となっているためか通関が滞っているとの声が複数の日系企業から聞かれた。

また、航空貨物や旅客便を扱う日系航空会社によると、韓国など世界の主要な港を保有する国の感染が拡大し、世界全体で船便が減少するなか航空貨物便の需要が上昇しているという。一方で、出入国規制による航空便の運休により航空貨物便の供給も減少しているという。また、これらの影響でフィリピンの航空貨物料金が急騰しているという(3月18日時点)。

ルソン地方内の工業団地に入居する複数の日系製造業からは、「公共交通機関の停止で従業員が出勤できない」「日本本社の方針で日本人駐在員が全員日本に一時帰国となった」といった声も聞かれた。そのほか、「政府が輸出型企業に対し、従業員が公共交通を利用せず通勤できるよう宿泊施設を確保するよう求めているが、工業団地周辺のホテルは数が限られており、宿泊施設を確保でき、実質的に操業を継続できない」といった声も聞かれた。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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