インフラ開発迅速化で大統領への特別権限付与法案が国会審議

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月17日

フィリピンのドゥテルテ政権が進める大規模インフラ開発計画「ビルド・ビルド・ビルド」のうち、総額4兆3,000億ペソ(約9兆300億円、1ペソ=約2.1円)に上る100の基幹プロジェクトの迅速化のため、ドゥテルテ大統領に特別権限を与える下院5456号法案が、今国会で審議されている。

下院第5456号法案は、憲法第4章23条2項にのっとり、ドゥテルテ大統領の任期である2022年までの残り2年半にわたり、基幹プロジェクトを進行させるため、進行の弊害となり得る法律、規則、判決などの制約を受けずに、ドゥテルテ大統領が政府の財源や警察権力を行使する特別権限を行使することを認めるもの。法案はさらに、フィリピン基地転換開発公社(BCDA)のビンス・ディゾン長官を、基幹プロジェクトの管理者に指名すると規定した。

法案提出の背景には、運輸省と公共事業道路省といったビルド・ビルド・ビルドの主幹省庁の予算執行に遅延が生じており、ドゥテルテ大統領の任期の2022年までに基幹プロジェクトの多くが完了しない懸念が生じていることがある。

世界経済フォーラム(WEF)は2019年10月、世界141カ国・地域の国際競争力をランキングした「2019年世界競争力レポート」で、フィリピンのインフラを96位と低く評価。インフラの中でも、「道路の接続性」(125位)、「航空サービスの効率性」(96位)、「鉄道の混雑」(91位)といった点を低く評価した(2019年10月23日記事参照)。アジア開発銀行(ADB)は同年9月、アジアの278都市の中で、マニラ首都圏を最も交通渋滞が深刻な都市に選定している(2019年10月3日記事参照)。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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