工業団地の実質封鎖で操業停止に追い込まれる日系企業も

(フィリピン)

マニラ発

2020年03月25日

フィリピン経済特区庁(PEZA)は3月19日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内感染拡大の状況を踏まえ、同日午後6時以降、カビテ州のカビテ・エコノミック・ゾーン工業団地ⅠおよびⅡを実質的に封鎖し、工場の操業を停止すると発表した。

PEZAは、総務業務や安全管理といった限られた担当者以外は工業団地内への立入りを禁止し、立入りを許可される担当者の宿泊場所を入居企業が提供しなければならないとした。PEZAの資料によると、カビテ・エコノミック・ゾーン工業団地Ⅰ及びⅡには、2019年12月時点で137社の日系企業が入居し、その大部分は輸出加工型の製造業である。突然の決定を受けて混乱する日系企業が多く、実質的な操業停止に追い込まれている状況だ。

同様の混乱は他の工業団地でも生じている。フィリピン政府は、3月16日付けでマニラ首都圏を含むルソン地方全体に広域隔離措置を講じており、4月13日まで外出禁止令や公共交通機関の停止等の特別対応が求められている(2020年3月19日記事参照)。しかし、企業の中には、所定の手続きを行っても、所在地の地方自治体等の運用基準が整合していないため、駐在員、従業員の通勤車両が検問所を通過できず、工業団地へ入場できない事態も生じている。フィリピン政府は、工業団地入居企業の従業員が公共交通を使わずに通勤できるよう工業団地内に宿泊施設を提供する場合は操業可能との方針を出しているが、厳格な移動制限下で宿泊施設を設置することも難しい状況だ。

一旦操業を停止した場合、4月14日に同措置が解除されたとしても、従業員が戻ってこないことも懸念される。

貿易産業省が業種別の操業継続申請手続きを発表

フィリピン貿易産業省(DTI)は3月19日、製造業、小売業、物流業の3業種について、4月14日までの封鎖措置の執行期間中の操業許可申請方法をウェブサイト上で発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、それぞれの申請先や申請フォームを掲載した。ただし操業する際には、人と人との接触を可能なかぎり減らす対策を厳格に行うこと、必要最低限の限られた人員で操業すること、出勤する従業員のリストを提出することを求めるとした。

一方で、カビテ・エコノミック・ゾーン工業団地のように、別の官庁が発した指針が理由で操業停止に追い込まれる事例もあり、DTIに操業許可申請を行ったとしても操業が継続できるか不明であり、多くの日系企業が首尾一貫しない政府方針への対応に苦慮している。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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