総合経済対策を発表、娯楽・飲食店舗営業と公共交通機関運行を停止

(ウズベキスタン)

タシケント発

2020年03月25日

ウズベキスタン政府は3月20~22日の間に新型コロナウイルスの国内感染拡大防止の強化措置を矢継ぎ早に打ち出した。新型コロナウイルス関連対策が市民生活に影響を与え始めたなかで、経済・社会への影響を軽減すべく政府は総合的な支援策を発表した。

ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領は3月20日、大統領令第5969号「新型コロナウイルスの世界的大流行による経済分野への悪影響の緩和に関する優先的措置について」に署名、政府に対し危機対策のための資金措置、企業活動への支援などを指示した。指示内容は大まかに7つに分けられ、a.経済全般〔10兆スム(約1,200億円、1スム=0.012円)の危機対策基金の創設、政府予算と同基金補填のための10億ドルの国際金融機関などからの借り入れ、2020年政府予算の見直し、3兆6,000億スム規模の地方での追加インフラ事業の形成、5,000億スム規模の事業者金融支援など〕、b.企業活動の支援(各種租税の減免、支払い・返済の遅延容認、税務検査の一時停止など)、c.輸出入の支援(輸出入時の支払相殺手続き許可、書類・許可取得手続きの加速化、輸出者向け輸送費補助金支給の迅速化など)、d.住民の社会的支援(子供を持つ親、身体障害者への雇用継続保障など)、e.金融安定に向けた支援(中央銀行による十分な市中への通貨供給、企業の債務返済期限の猶予、ウズベキスタン航空の債務返済計画の見直しなど)、f.食品供給(生産状況・価格のモニタリング、必要量の計算など)、g.住民への情報提供(安定した通信状況の維持、コロナウイルス対策に関するシステム的な情報発信など)が含まれる。

コロナウイルス感染拡大防止に向けた措置も大幅に強化された。ウズベキスタン運輸省は3月19日、3月20日から40日間、全ての国際乗客輸送を停止すると発表した(物資輸送、チャーター便は除く)。ウズベキスタン航空はすでに4月5日までの国際便の運航停止を表明しているが(2020年3月17日記事参照)、これが4月下旬まで延長される。加えて、政府特別委員会は3月23日からすべての国境審査場を閉鎖することを発表した(外国人の出国は除く)。国内では3月21日からナイトクラブ、ディスコ、スパ・マッサージサロン、チャイハナ(持ち込み調理型の小規模談話スペース)、カフェ(宅配除く)、カラオケホール、水タバコ(カリヤン)バー、ネットカフェなどの娯楽・飲食関連施設が閉鎖された。3月23日からは数百名の参加が一般的な結婚式などの家族的な大規模イベントも禁止・制限された。行政関係では3月20日から閣僚会議が来客、紙媒体での手紙の受付を一時的に停止した。3月22日からはタシケント市で公共交通機関が運行を停止(以後は自家用車もしくはタクシーを利用)。3月25日午前6時よりタシケント市、地方構成体の中心都市の公共の場ではマスク着用が義務化され、違反者には罰金が科される。また、タシケント市の事業主(法人形態は問わない)は自己の活動に損害を伴わない範囲で従業員に対する休暇措置をとること、勤務を継続する従業員に対しては最大限遠隔業務とする配慮を行うこと、職場ではマスクを着用させることが義務付けられた。このほか、65歳以上の高齢者には不要不急の外出を避けることが推奨され、タシケント市内の大手スーパーなどではレジに並ぶ人々が1メートル間隔をキープするよう床にマーキングが行われている。

ウズベキスタンの新型コロナウイルスの感染者は3月22日19時(現地時間)時点で43人。政府は踏み込んだ対策に市民の理解を求めているが、マスクの安定的な供給が行われない(注)中でのマスク着用義務違反への罰金徴収などに市民は拒否反応を示している。

(注)政府はマスク供給量を増やすため、製造・販売ライセンス取得義務や付加価値税の免除などの措置をとっている。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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