新型コロナウイルスへの経済対策でエジプト中銀が利下げ、債務返済期限を延期

(エジプト)

カイロ発

2020年03月26日

エジプト中央銀行は新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響緩和のため、対策を打ち出している。12%台だった政策金利は3月17日以降は3ポイント引き下げ9%台となっており、24日時点の銀行間金利(オーバーナイト)は9.72%だった。さらに、各銀行に対し企業・個人の債務返済期限を6カ月延期するよう通達を出した。エジプト・ポンドでの振込手数料を3カ月間免除する措置も講じており、現金支払いにおける人的接触や紙幣受渡を避ける感染防止策と、経済活動における負担軽減策の両方の効果を見込める。2月下旬以降は株価が下がり続けていたエジプト株式市場(2020年3月18日記事参照)に対してエジプト中央銀行が200億エジプト・ポンド(約1,400億円、1エジプト・ポンド=約7円)の資金を投入し、国営銀行もエジプト株式を買い増したことが後押しし、エジプト株式市場はEGX50指数が25日は前日比約2.4%上昇するなど回復を見せた。

エジプト中央銀行の経済対策

  • 政策金利の3ポイントの利下げ
  • 200億エジプト・ポンドをエジプト株式市場に投入
  • 企業・個人の債務返済期限の6カ月の延期を各銀行へ要請
  • 振込手数料の3カ月間の免除を各銀行へ要請(エジプト・ポンド取引のみ)
  • 銀行営業時間の短縮の通達(9時30分~13時30分まで営業、ATMは原則24時間稼働)
  • 企業への新型コロナウイルス対策用融資策(計画中)

なお、新たな措置や措置が変更になる場合もあり、最新情報はエジプト中央銀行のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを適宜参照する必要がある。

エジプトにおける新型コロナウイルス感染者は402人(25日時点、死者20人)となっており、公的機関窓口や小売店など接客業ではマスクや手袋の着用、アルコール除菌など保健・人口省の指導に基づく感染防止策を実施している。通関や港湾は稼働しているものの、交代勤務・在宅勤務などの影響で、輸出入の手続きが遅延する可能性が出ている。滞在ビザ、労働許可、車免許などの公的申請の窓口は閉鎖予定だが、モスタファ・マドゥーリー首相は状況が落ち着くまで猶予を認めると発表した(猶予期間は未公表)。民間企業では在宅勤務や交代勤務などにより営業を続けており、工場なども稼働しているケースが多い。一方で、感染防止のため空港や観光地が閉鎖、カフェや外食業も閉鎖しており(2020年3月26日記事参照)、観光業やサービス業への甚大な影響が予想される。エジプト経済へのマイナスの影響が大きいため、中央銀行は次々と対策を打ち出しており、一定効果が望め、今後、新たに企業への融資策、観光業への対策なども随時実施していく方針だと述べている。

(井澤壌士)

(エジプト)

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