移動制限令が4月14日まで延長、中間製品の操業承認少なくサプライチェーンへの影響甚大

(マレーシア)

クアラルンプール発

2020年03月27日

マレーシアのムヒディン・ヤシン首相は3月25日、3月31日までの予定だった移動制限令を4月14日まで2週間延長することを発表した。3月23日の会見では、移動制限令の終了時に国家安全保障委員会において決定するとしていたが(2020年3月25日記事参照)、延長に対する準備ができるよう発表時期を繰り上げたとした。

新たな感染者の減少傾向が確認できるまで、状況を見ながら実施期間の見直しを随時行うとし、「再延長する必要性がある場合は発表を行う」と述べた。

日系企業の操業申請承認は約4割、原材料調達に支障

マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)が工業部会員313社を対象に3月22~23日に実施したアンケートによると、有効回答社数129社のうち、操業申請を行ったのは64社、国際貿易産業省(MITI)から回答を受領したのは36社で、うち14社が承認を得た(添付資料参照)。内訳をみると、最終製品の製造業の承認率が53.8%なのに対し、中間製品/原料の製造業の承認率は28.6%と低かった。

MITIから操業申請の承認を得た企業のうち、原材料や部品のサプライヤーが操業停止しているため、生産に支障が出ている企業の割合は64.7%に上った。MITIによる操業可否の審査が、最終製品の特長をもってされていることが主因とみられる。移動制限令の延長も加え、操業が承認された企業であっても、原材料・部品が手に入らず生産ができなくなるなど、サプライチェーンへの甚大な影響が懸念される。

新規の操業申請が終了か

MITIは3月24日、操業申請の期限を3月24日午後11時59分までとする通知を出し、現時点で新規の操業申請はできなくなっている。移動制限令の延長発表後の通知においても、3月25日以降の申請は受け付けない、と明記している。他方、MITIによると、既に承認を得ている企業は再申請の必要はなく、4月14日まで操業が可能だという。また、MITIの承認を受けている企業のための輸送についても、操業の継続が認められた。

操業停止の延長で企業存続への懸念も

独立系シンクタンクのマレーシア経済研究所(MIER)は3月24日、新型コロナウイルスの感染拡大および移動制限令の実施による経済への影響は非常に深刻で、政府には倒産、失業、家計所得の減少などの対策のため750億リンギ(約1兆8,750億円、1リンギ=約25円)の追加予算の導入を提案している。MIERの予測では、2020年の経済成長率は前年比マイナス2.9%、240万人が失業するとの見通しだ。産業界にとって、操業停止の延長は企業の存続にかかわる厳しい措置で、政府に対してビジネスの実態に即した対応を強く求めている。

(田中麻理)

(マレーシア)

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