トランプ米大統領、スポンジチタンの輸入是正措置を発動せず、232条調査の結果を受け

(米国、日本)

ニューヨーク発

2020年03月03日

トランプ米国大統領は2月27日、1962年通商拡大法232条(以下、232条)に基づく調査結果を受け、スポンジチタンの輸入は安全保障を損なう恐れがあることを認めつつも、輸入是正措置は取らないとの大統領覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

スポンジチタンの輸入自体は脅威と認定も輸入是正措置は取らず

スポンジチタンは、米商務省によると、航空機のほか、宇宙船、人工衛星、船舶や武器の製造に使われており、米国の消費量(2018年)の68%が輸入されている。232条調査を所管する商務省は、国内企業のチタニウムメタルコーポレーションからの要請を受けて、2019年3月4日からスポンジチタンの輸入が米国の安全保障を損なう脅威に当たるかの調査を進めていた(2019年3月12日記事参照)。

今回の大統領覚書は、商務省のこの調査結果を受けて大統領が判断を下したもの。大統領覚書によると、商務長官が2019年11月29日に大統領へ提出した報告書(非公開)では、安価なスポンジチタンおよびチタンのスクラップの輸入により、米国産チタンの価格が下落し、ひいては国内生産者の老朽化した生産設備の再建が難しくなるとしている。他方、2018年のスポンジチタンの輸入先の94.4%が日本で、日米間には、北朝鮮の非核化に向けた共通の関与や強固な経済・戦略的パートナーシップを含めた重要な安全保障関係があるとした報告書の内容を大統領は考慮したとしている。その上で、スポンジチタンの輸入自体は安全保障を損なう恐れがあるものの、対策としては、輸入是正措置とは別の手段が効果的とする報告書の結論に大統領は同意するとした。

作業部会で緊急時のスポンジチタン確保の手段を策定

対策としては、国防長官と商務長官が作業部会を組成し、そこに日本の政府機関も招いた上で、緊急時に米国の安全保障および重要産業のためにスポンジチタンへのアクセスが保障される手段を策定するとしている。かつ、国防長官は国防生産法に基づき、新規の予算要求も含めて、安全保障に必要な量のスポンジチタンを確保すべく適切な措置を講じることになっている。国防長官と商務長官は、これらの検討結果を定期的に大統領に報告する。

(磯部真一)

(米国、日本)

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