スポンジチタンの輸入に対する232条の安全保障調査を開始

(米国)

ニューヨーク発

2019年03月12日

米国商務省は3月4日、1962年通商拡大法232条〔以下、232条、19.U.S.C.1862(b)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)〕に基づく安全保障調査をスポンジチタンの輸入に対して開始すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

232条は、対象製品の輸入が米国の安全保障を損なう恐れがあると商務省が判断した場合に、当該輸入を是正するための措置を取る権限を大統領に与えている(注1)。米国政府は2018年3月23日に、同法に基づき鉄鋼とアルミニウムの輸入に対して追加関税を賦課している(2018年3月27日記事参照)。また、自動車・同部品やウランの輸入に対しても同調査を実施している。自動車・同部品に関しては、商務省が2019年2月17日に大統領に調査結果を報告しているが、内容はまだ公表されていない外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

今回のスポンジチタンに対する調査は、米国で唯一、同製品を製造するチタニウムメタルコーポレーション(TIMET)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによる商務省への要請(2018年9月27日付)を受けて、開始された。商務省によれば、スポンジチタンは航空機のほか、宇宙船、人工衛星、船舶や武器の製造に使われており、米国の消費量の約6割が輸入されている。2018年は、日本からの輸入額が全体の9割以上を占めた(注2)。なお、米国政府は2017年にTIMETからの要請を受け、日本とカザフスタンからのスポンジチタンの輸入について、アンチダンピング(AD)の発動に向けた調査(注3)を行ったが、米国際貿易委員会(USITC)はAD措置の発動要件である国内産業への損害を認めなかったPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)

パブリックコメントの締め切りは4月22日

商務省は3月8日、官報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)において、本件に関するパブリックコメントを4月22日まで(反論コメントは5月22日まで)連邦政府のサイト(BIS-2018-0027)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで募集すると発表した。スポンジチタンの輸入実態、国防上必要な国内生産の規模、外国企業との競争による国内産業のへの影響などについて意見を募集する。

なお、232条の規定は、商務省に対して、調査結果と大統領への提言をまとめたレポートを、調査開始日から270日以内に大統領に提出することを求めている。大統領は、同レポート受理後90日以内に商務省の決定に同意するかを判断し、同意する場合には、輸入是正措置の内容や期間などを決定する。

(注1)232条調査の概要については、2017年4月24日記事参照

(注2)商務省は対象製品のHTSコードを示していない。ここでの数値はHTSコード8108200010に基づく。

(注3)カザフスタンからの輸入については、補助金相殺措置(CVD)の発動に係る調査も対象になった。

(鈴木敦)

(米国)

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