欧州委、医療機器の戦略的備蓄措置を決定、産業界は国境措置対応の問題点を指摘

(EU)

ブリュッセル発

2020年03月24日

欧州委員会は3月19日、EU加盟国における新型コロナウイルス対策を支援する目的で、人口呼吸器、防護マスクなど医療機器・器具の戦略的備蓄措置を実施する方針を固め、助成を含む同措置が翌20日に施行された外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。緊急備蓄の対象となる医療機器・器具(例)は次の通り。

  • 人工呼吸器などの集中治療用医療機器
  • 再利用可能マスクなどの個人用保護用品
  • ワクチンと治療薬
  • 実験用具など

同措置により、EU加盟国が当該医療機器などの備蓄を進める場合、(そのための経費について)直接助成を欧州委に申請することができる。加盟国による備蓄経費の90%がこの直接助成で賄われ、10%を加盟国自体が負担する。

新型コロナウイルス問題対策に伴う国境措置について問題指摘相次ぐ

新型コロナウイルス感染拡大への対応で一部のEU加盟国が実施に踏み切った国境措置の影響について、欧州ジェネリック医薬品協会(Medicines for Europe)は3月18日付の声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、国境措置(一時的出入国制限や医療器具などの輸出制限など)が医薬品生産企業の操業にとって問題となっている点も指摘した。具体的には、スロバキアからハンガリーへの越境労働者に対する出入国制限があり、会員企業の生産活動に影響が出ているとした。また、会員企業の労働者の安全・衛生のためにマスクなど個人用防護用品(PPE)の供給は不可欠だが、このEU域内での出荷についても一部加盟国で制限に直面していると問題提起している。

また、声明の中で同協会は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う危機的状況の中で、実需のある医薬品生産効率を最大化するための国際協調の必要性を強調した。同協会はG7諸国による協調を支持するとしたが、同時に主要医薬品(原料)の量産を担う中国(化学品)、インド(医薬品、医薬品有効成分;API)、広域欧州(EU-英国-スイス:医薬品、API)、米国(医薬品)と、その他の医薬品供給国(カナダ、ウクライナ、トルコなど)との連携も重要だと述べた。また、WHO主導による医薬品産業と各国保健衛生当局との政策対話が必要と指摘、EUの指導力に期待感を示した。

このほか、欧州化学工業連盟 (Cefic)は3月18日付の声明で、新型コロナウイルス対策が進められる中、欧州委員会に化学産業としての提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(3月17日付)を送付したことを明らかにした。同連盟は「医薬品・医療器具」「食品」「飲料水」の3点を優先物資と指摘したが、それらの物流維持の重要性も強調。これら必需物資の輸送のための優先レーン(グリーン・レーン)導入を加盟国に求めた欧州委提案(2020年3月17日記事参照)を支持するとした。また、次の物資について安定供給・輸送維持を優先すべきとの提案を行った。

  • 医療機関向けの医薬品メーカに対する解毒剤、有効医薬成分
  • 医療機器用プラスチック樹脂、マスク用ポリプロピレン繊維
  • 廃水処理と飲料水の製造に必要となる化学品
  • 産業廃棄物の処理プラントへの輸送確保、プラントの稼働維持

(前田篤穂)

(EU)

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