2019年11月の貿易赤字は前年同月より7億ドル減の33億ドル、燃料と鉄鋼の輸入減が貢献

(フィリピン)

マニラ発

2020年02月10日

フィリピン統計庁(PSA)は1月10日、2019年11月の貿易収支が33億4,186万ドルの赤字となり、前年同月から7億3,232万ドル赤字幅が縮小したと発表した。1月から11月までの貿易収支は345億9,012万ドルの赤字となり、赤字幅は前年同期比で47億7,307万ドル減少した。

図 フィリピンの貿易収支

11月の赤字幅縮小の要因として、11月の輸入が前年同月比で7億7,230万ドル(8.0%減)減少したことが挙げられる。特に、鉱物燃料や潤滑油、関連物質が4億4,902万ドル減(34.9%減)、鉄鋼が1億3,627万ドル減(29.8%減)となったことが貿易収支の改善につながった(表1参照)。また、11月の輸入総額の27.3%を占める電子製品が1億4,994万ドル減(5.8%減)となり、特に部品/デバイス(半導体)が2億8,267万ドル(15.8%減)となったことが貢献した。

表1 フィリピンの輸入統計

一方で、輸出額は前年同月比で3,998万ドル減少(0.7%減)となった(表2参照)。最も減少額が多かったのは、自動車、航空機、船舶用配線で5,681万ドル減(21.7%減)で、機械類および輸送用機器が4,557万ドル減(23.7%減)となった。一方、輸出総額の58.6%を占める電子製品は4,567万ドル増(1.4%増)で、その中でも電子製品の輸出額の74.6%を占める部品/デバイス(半導体)は5,209万ドル増(2.2%増)だった。

表2 フィリピンの輸出統計

11月の輸出先を国・地域別にみると、多い順に日本が9億3,079万ドル(前年同月比4.9%増)、米国が8億9,006万ドル(0.4%減)、香港が7億7,657万ドル(6.7%増)、中国が6億9,648万ドル(2.9%増)となった(表3参照)。また、1~11月の輸出の合計額は、米国が前年同期比6.9%増の105億4,545万ドルで1位となり、2位は日本で98億2,073万ドル(2.2%増)だった。

11月の輸入元を国・地域別でみると、多い順に中国が20億5,134万ドル(前年同月比13.8%増)、日本が8億9,442万ドル(2.1%減)、米国が6億6,881万ドル(3.6%増)、タイが6億248万ドル(2.1%減)となった(表3参照)。中国は1~11月の輸入の合計額も、前年同期比12.3%増の225億5,569万ドルで1位となり、輸入元上位6カ国で唯一の増加だった。2016年のドゥテルテ政権発足以降、フィリピンと中国は政治、経済の両面で関係を深化させており、ドゥテルテ政権が進める大規模なインフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」の下で実施される75の基幹プロジェクトのうち、中国のODAによるプロジェクトが19あり、その供与総額は5,150億ペソ(約1兆815億円、1ペソ=約2.1円)とされる(2019年12月16日記事参照)。こうした潤沢な支援と引き換えに、中国は領土問題でフィリピンに対して譲歩を求めている。フィリピン国民はそうした状況を懸念しており、フィリピンの民間調査会社ソーシャルウェザーステーションズ(SWS)が2019年11月に発表した調査(2019年9月時点)結果によると、中国を信頼していると回答したフィリピン国民の割合は21%で、ドゥテルテ政権が始まった2016年6月以降では、18%にとどまった2018年6月に次いで2番目に低い水準となった。

表3 フィリピンの国・地域別貿易額上位10カ国

(坂田和仁)

(フィリピン)

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