インフラ事業で高まる中国依存度、1兆円超が中国ODA

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月16日

フィリピン国家経済開発庁(NEDA)は、ドゥテルテ政権が進める大規模なインフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」の下で実施される75の基幹プロジェクトのうち、中国のODAによるプロジェクトが19存在すると発表した。12月2日付の地元紙「ビジネスワールド」が伝えた。75の基幹プロジェクトのうち、59が各国のODAによるプロジェクトで、そのうち19が中国のODAで実施され、その供与総額は5,150億ペソ(約1兆815億円、1ペソ=約2.1円)とする。

中国のODAで実施される主な案件としては、マニラ首都圏からルソン島南端まで全長639キロのフィリピン国有鉄道(PNR)の長距離鉄道建設プロジェクト(総額:1,753億ペソ)や、乾期に水不足が発生するマニラ首都圏の新しい水源となるカリワダム建設プロジェクト(122億ペソ)、ミンダナオ島の河川洪水対策プロジェクト(392億ペソ)などがある。

中国の影響力の大きさは、通信や送電といった国家セキュリティーに関わる重要なインフラにおいても懸念されている。通信についてはフィリピン国家通信委員会(NTC)が7月、国内第3の通信事業者として、中国電信(チャイナテレコム)が40%出資するディト・テレコミュニティーに事業許可証を付与したことに対して、国民から懸念の声が上がっている。また、送電についてはフィリピンの上院が11月、中国の送電企業大手の国家電網が40%を出資するフィリピン国家送電会社(NGCP)の送電網が、国家電網によって支配されているとする懸念に基づいて、安全監査を実施するための決議案を提出した。

NEDAは11月、投資調整委員会内の閣内委員会(ICC-CC)および社会基盤整備委員会(Infracom)が当初の75の基幹プロジェクトを見直し、その数を100に増やした基幹プロジェクトの改定版を、承認したと発表した(2019年11月13日記事参照)。改定版の100の基幹プロジェクトは総額4兆2,000億ペソに上り、そのうち2兆3,100億ペソがODA、1兆7,700億ペソが官民連携(PPP)、そして1,680億ペソがフィリピンの国家予算によるもの、とされる。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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