東莞市、新型コロナウイルス感染拡大による国際契約の履行リスクへの対応ガイドライン策定

(中国)

広州発

2020年02月20日

中国では新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、多くの企業が本格稼働にはまだ時間を要する状況にある(2020年2月19日記事参照)。こうした中で、製品生産や出荷の遅れなどから契約を履行できないリスクへの懸念が高まっている。

輸出型企業が多く集積する広東省東莞市では、同市商務局が2月6日、国際契約の履行リスクに関する「国際貿易企業の感染拡大への対応ガイドライン」を策定し発表した。

不作為による損害拡大の責任を回避

ガイドラインでは、春節(旧正月)休暇前に受けた注文について、新型コロナウイルスの影響から、期日どおりの納品ができない場合、まずは取引先と連絡を取り、契約履行期間の延長など契約変更の交渉を積極的に行うよう促している。

先方の理解が得られない場合、自社が可能な限りの対応をしていること(例えば、操業再開申請書を当局に提出したなど契約履行に向けた対応を取ったこと)をメールや手紙による書面で顧客に提出し、不作為による損害拡大の責任を負わないようする。

それでも紛争が起こる場合には、「不可抗力」を証明するなどの対応により、自社の責任の軽減・免除を図るべきだとしている。「不可抗力」とは、予見できず、回避も克服もできない客観的状況を指す。「国際物品売買契約に関する国際連合条約」第79条と中国の「契約法」第117条により、今回の感染拡大がその要件を満たしており、契約を履行できない場合は一部または全部の責任が減軽・免除を受けることが可能となる。

中国国際貿易促進委員会(CCPIT)は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で海外の取引先との契約を履行するのが困難になった中国企業(外資系企業の現地法人を含む)に対し、不可抗力事態発生の証明書を発行している。ただし、この証明書は不可抗力事態が発生したことを証明するだけで、感染拡大の原因と契約履行が不可となった因果関係や、責任の軽減・免除範囲などについては、企業が自ら立証する必要がある点には留意が必要だ。

取引先からの発注取り消しへの対応

ガイドラインでは、取引先が感染拡大を理由に発注を取り消した場合、まず積極的に取引先とコミュニケーションを取り、感染の最新状況や自社の対応策などを伝え、取引先の不安を払拭(ふっしょく)する努力をするよう促した。その上で、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」に当たると宣言したこと、またその際に「不必要に人やモノの移動を制限する理由はない」としたことを取引先に強く伝えるべきとしている。それでも合意できない場合は、自社に有利な証拠を保存した上で、弁護士などを通じて納品の受け取りおよび代金の支払い促す。納品や支払いが拒否された場合には、中国輸出信用保険(貿易保険)を活用し、輸出取引上の損失をカバーする手段もあることを紹介している。

(盧真)

(中国)

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