トタルとグループPSA、欧州次世代電池のパイロットプラントの立ち上げを発表

(フランス)

パリ発

2020年02月12日

石油会社トタルの子会社で産業用電池メーカーのサフトは1月30日、自動車グループPSAと共同で、フランス南西部ネルサックにあるサフトの工場敷地内に、電気自動車(EV)用の次世代リチウムイオン電池の開発・実用化に向けたパイロットプラントの立ち上げを発表した。サフトとグループPSAは50%ずつの折半出資で、EV用電池製造事業を手掛ける合弁会社オートモーティブ・セル・カンパニー(ACC)を設立する。

パイロットプラントの立ち上げは、ドイツ、フランスを含むEU加盟国7カ国が参加する欧州次世代電池産業構築プロジェクト(2019年12月10日記事参照)の一部となるもので、2021年半ばに稼働の予定だ。ネルサック工場で行われた上述の発表の際には、エマニュエル・マクロン大統領やブリュノ・ルメール経済財政相らが参列し、同プロジェクトが欧州における2050年でのカーボン・ニュートラルの達成や、EV用電池供給における欧州の主権回復、国内製造業における雇用創出につながることなどを強調した。

ACCは、ネルサックのパイロットプラントの立ち上げに続き、フランス北部オー・ド・フランス地域圏(注)ドゥブランにあるPSAの製造拠点で、次世代電池の本格的な生産を開始する予定。当初の生産規模は年間8ギガワット時(GWh)程度だが、最終的には24GWhまで引き上げる計画だ。また、ドイツでも同様の電池製造工場を立ち上げるとしており、2030年までに両者を合わせた年間生産能力は48GWhと、欧州電池市場のほぼ10~15%に達するとした。サフトは、欧州におけるEV普及に伴い、欧州における電池需要は2030年に約400GWhと現行の15倍に拡大すると予想している。

(注)地域圏(région):フランスの地方行政4段階(大きい順に、地域圏、県、市町村広域連合体、市町村)のうち、最も広域な単位。2015年の改革で、その数は海外領土を含めて22から13に削減された。「州」と訳す場合もある。直接選挙(多数決と比例代表制の組み合わせ)で選出される議員から成る地域圏議会が主要な地域政策の方向性を決定する。地域圏議会議員が選出する地域圏議会議長は、地域政策の優先順位を設定するとともに、地域の予算を管轄する。議長には、大臣経験者など政界の重鎮が就任する場合がある。

(山崎あき)

(フランス)

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