東海大学がライフケア分野の日ロブリッジ人材育成に関する中間報告会を開催

(ロシア、日本)

欧州ロシアCIS課

2020年02月26日

東海大学は2月18日、文部科学省「大学の世界展開力強化事業」(ロシア)(注)の中間報告会を東京都内で開催した。同大学は平成29年度(2017年度)に同事業に採択されており、主に極東地域の経済発展を目的として、極東連邦大学をロシア側パートナーとし、日ロ「8項目の協力プラン」の健康寿命の伸長に資するライフケア分野の日ロブリッジ人材育成に取り組んでいる。

報告会の冒頭あいさつで、東海大学副学長の吉川直人教授は、世界平和の実現に向けて半世紀以上にわたる旧ソ連・東欧諸国との交流実績を説明。同大学の医学部、健康学部をベースとして、産学連携や地域連携、日ロ交流を図りながら、実務者育成に取り組んでおり、2018年に極東連邦大学と東海大学は相互にオフィスを開設したと述べた。

東海大学国際教育センター所長の山本佳男教授は、同大学のプロジェクトについて紹介。ライフケア分野のブリッジ人材育成に向け、a.短期海外研修(2~4週間)、b.中長期交換留学(半年~1年)、c.健診人材実務者研修(2~6週間)、d.ダブルディグリープログラム(大学院レベルの単位の相互取得)に取り組んでいると述べた。このうち、a.については海洋調査実習船「望星丸」を用いて、日ロ双方の学生が参加する、北海道留萌港からウラジオストクを経由し静岡県清水港までの航海研修を実施。洋上において、日ロ学生フォーラムやライフケア分野の合同ワークショップを開催したと述べた。ウラジオストクの極東連邦大学生物医学部のワジム・クメイコ副学部長は、海洋生物を用いた新薬開発、公衆衛生、再生医療、個別化医療などの分野における日ロ間の共同研究・連携の可能性について講演した。

外国人の日本での就労を支援するキャリアバンクの執行役員 海外事業部長の水田充彦氏は、日本で就労するロシア人は数千人程度だが、技術・人文知識・国際業務などの高度人材の割合が95%に上っていると指摘。日本はほかの先進国に比べて給与水準が低いこと、就労の際に日本語が求められることや、ビザによる就労分野の制限、採用活動シーズンが海外と異なることなどがネックな一方で、日本の技術・市場の魅力に引かれたり、日本好きな学生があえて日本を選んでいたりする状況がみられると述べた。

パネルディスカッションでは、東海大学健康学部の石井直明教授が、東海大学が伊勢原市を中心に実施している、健康診断受診率が低い高齢者を主な対象とした地域住民向けの「健康診断バス」プロジェクトを紹介。ロシア人学生と一緒に実施したところ、日本人高齢者とのコミュニケーションの面が課題だと語った。

写真 報告会の様子(ジェトロ撮影)

報告会の様子(ジェトロ撮影)

(注)本事業は、国際的に活躍できる人材の育成と大学教育の世界展開力の強化を目指し、日本人学生の海外留学と外国人学生の戦略的受け入れを行う対象国・地域の大学との国際教育連携の取り組みを支援することを目的とし、文部科学省が2011年度に開始した事業。交流相手国をロシアとしたプログラムには2014年に5校、2017年に7校が採択されている(2020年2月13日記事参照)。

(齋藤寛)

(ロシア、日本)

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