EU、中国、カナダなど有志のWTO加盟国、紛争解決の暫定制度構築を目指す

(EU、世界)

ブリュッセル発

2020年01月27日

欧州委員会は1月24日、EUやカナダなど17のWTO加盟国・地域(注1)がWTO紛争解決手続きの一部として、仲裁による暫定的な上訴制度の構築に向けた作業を進めることに合意したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

合意はダボス(スイス)で17カ国・地域の貿易担当相が取り交わした。当該国・地域の閣僚による声明は、「ルールに基づいた貿易システムには、WTO紛争解決制度が機能することが最も重要だ」が、WTO紛争解決制度の上級審である上級委員会が機能停止している状況下(2019年12月12日記事参照)で、「改革された上級委員会が完全に機能するまでの間、WTO紛争解決了解第25条に基づく暫定的な多国間上訴制度を構築すべく、迅速に作業を完了させるよう、自国・地域の担当官に指示した」と記している。

WTO紛争解決了解第25条は「紛争解決の代替的な手段」として、当事国・地域の合意に基づく仲裁手続きを認めている。EUは今回の発表に先立ち、12月12日に公表した通商協定の適用・執行に関する規則改正案(2019年12月16日記事参照)の中で、同25条に基づく仲裁による暫定的なWTO紛争解決上の上訴手続きを提案していた(注2)。欧州委のフィル・ホーガン委員(通商担当)は「このような制度がWTO上級委員会がまひしている状況下では必要な緊急時対応措置(contingency measure)であり続ける」と強調した。

閣僚声明ではまた、「この暫定制度は参加を望む全てのWTO加盟国・地域に開かれたものだ」と述べており、現状では全164加盟国・地域のうち一部にとどまる同制度への参加が、今後拡大していくことへの期待が示されている。

(注1)オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、チリ、コロンビア、コスタリカ、EU、グアテマラ、韓国、メキシコ、ニュージーランド、ノルウェー、パナマ、シンガポール、スイス、ウルグアイ。

(注2)欧州委の提案によると、暫定制度は「自動的なメカニズムではなく、ほかのWTO加盟国の個別の合意を必要とする」。

(安田啓)

(EU、世界)

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