牛肉輸出量が過去最高を記録、1人当たり年間消費量は大きく減少

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年01月23日

アルゼンチンの食肉および食肉加工品商工会議所(CICCRA)は1月8日、2019年の牛肉(骨付き)の輸出量が前年比47.9%増の83万1,000トンとなり、1969年の77万5,000トンを超え、過去最高を記録したことを発表した(図1参照)。

図1 牛肉年間輸出量

2019年の牛肉の生産量は前年比1.8%増の312万1,000トンだったが、その26.6%相当が輸出に回されたことになる。最大の牛肉輸出相手国は中国で、1月8日付のCICCRAの報告書によると、2019年1月~11月期の輸出量の74%を占める。2番目に多い輸出先のチリとドイツでさえ、ともに5%にとどまっており、中国の突出ぶりがうかがえる(図2参照)。同期の対中輸出量は前年同期比104.3%の37万4,500トンとなり、アルゼンチン産牛肉の輸出増を牽引する役割を担った。

図2 牛肉輸出量の国別割合(1~11月期)

急増の背景には、2018年5月に中国向け輸出の全面解禁の協定が調印されたことがある(2018年5月24日記事参照)。アルゼンチン産骨なし冷凍牛肉の中国市場への輸入はかねて認められていたが、15年間にわたる交渉の末、生鮮・冷蔵牛肉(骨付きか骨なしかを問わず)の輸入も認められることになった。

一方、アルゼンチンの2019年の1人当たり年間牛肉消費量は前年比9.4%減の51.0キログラムで、2011年に記録した54.6キロ以来、最も少ない消費量となった。

1月12日付「クラリン」紙によると、アルゼンチン経済の低迷に伴う消費者の購買力低下が原因の1つとして挙げられる。この1年間で、牛肉のみならず多くの食品の消費量が減少しており、比較的高い価格帯に位置付けられる牛肉は、消費低迷の影響を特に強く受けたものとみられる。また、アルゼンチン人の食習慣が変化しているという見方もある。ミゲル・シアリティCICCRA会長は、15年前の1人当たりの食肉の年間消費量の内訳は牛肉70キロ、鶏肉25キロ、豚肉6~7キロだったが、2019年は牛肉51キロ、鶏肉46キロ、豚肉17キロと、鶏肉と豚肉の消費量が増加していると指摘した。

(津下みなみ)

(アルゼンチン)

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