ロシア内閣総辞職、プーチン大統領の意図にカザフスタンでさまざまな解釈

(カザフスタン、ロシア)

タシケント発

2020年01月27日

ロシアの内閣総辞職(2020年1月16日記事参照)は、カザフスタンにおいてもさまざまな憶測を呼んでいる。カザフスタンにおける権力移譲プロセスとの類似性から、プーチン大統領は「ロシアのエルバスになる」との指摘もある。「エルバス」とはカザフ語で国家指導者の意で、具体的には初代大統領を指す。

2010年6月に、初代大統領の特権を定めた「エルバス法」が制定され、初代大統領に「カザフスタン諸民族会議」や「安全保障会議」の終身議長を務める権利などを認めた。2018年5月には「安全保障会議法」が採択され、それまで安全保障問題の諮問機関だった同会議の管轄範囲を拡大し、政策実行の調整・評価、主要人事の審査機能も付与した。初代大統領のナザルバエフ氏は、2019年3月の大統領辞任後も「エルバス」として政治権力を保持している。以上を踏まえ、カザフスタンの現地報道に表れた有識者のさまざまな見方を以下に紹介する。

「テングリニュース」1月17日:カザフスタンの有識者の多くは、プーチン大統領が任期満了後も権力を維持するとみている。カザフスタン国際関係評議会の幹部会メンバーのドスィム・サトパエフ氏は「プーチン大統領が権力の座にとどまろうとするのは明白。ロシアの政治体制がカザフスタンとは異なるため『エルバス』のような地位には就けないが、国家安全保障会議、議会、国家評議会の代表として、権力を握り続ける可能性がある」と述べている。

「インビジネスKZ」1月17日:民間の社会科学研究所「アルテルナティブ(選択)」のアンドレイ・チェボタレフ所長は「プーチン大統領は院政のためではなく、権力の完全移譲を目指している。一局集中化した大統領権限を分散させることで、民主主義的な体制を構築するためのシミュレーションを始めた」とする。

「インビジネスKZ」1月17日:大統領の行政アカデミーの政治学者イスラム・クラエフ氏は「2021年のロシア下院選挙を前に、支持率が低下し続けているメドベージェフ内閣を解散させることで、選挙を乗り越えたいのではないか」と推測する。

ネット報道サイト「ビジョン」1月16日:世界経済研究所のアスカル・ヌルシャ所長は「プーチン大統領は、外国市民権を有している者、過去に有していた者の政治的重要ポスト就任を禁ずることを提案している」と指摘。「ロシアの資産を守り、脱税やマネーロンダリングへの取り締まりを強化することも意図している」とみている。新首相に元連邦税務局長のミハイル・ミシュスチン氏を抜てきした(2020年1月17日記事参照)理由も、金銭の流れを管理し、国家予算増と海外に流出した資本の回収にあるとする。

ロシア・カザフスタン関係について、有識者の多くはプーチン氏が権力を掌握している限り、大きな変化はないとみる。ただし、ミシュスチン新首相が自国経済を優先させて保護的政策をとる可能性もあり、経済分野の交渉が以前より厳しくなる(世界経済研究所のヌルシャ所長)との見方もある。

(増島繁延)

(カザフスタン、ロシア)

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