常住人口300万人未満の都市で戸籍取得制限を全面撤廃

(中国)

北京発

2020年01月20日

中国共産党中央委員会と国務院は12月25日、「労働力と人材の流動化体制の改革促進に関する意見」(以下、意見)を公布した。常住人口が300万人未満の都市で戸籍の取得制限を全面的に撤廃するなど、労働力の流動機会の創出や労働移動の円滑化、人材の発展機会の拡充など、16項目の措置を打ち出している。人力資源社会保障部はこの意見について、労働力の流動を妨げる規制を撤廃し、合理的、公正かつ円滑で秩序ある社会的流動性を実現するものだとした。都市の規模に応じた戸籍制限の撤廃・緩和については、国家発展改革委員会が2019年4月に公布した「2019年新型都市化建設の重点任務」の中に盛り込まれていた(2019年4月16日記事参照)。

意見では、常住人口が300万人未満の都市について、戸籍の取得制限を全面的に撤廃すること、300万以上~500万人未満の都市については、取得制限を全面的に緩和すること、500万人以上の都市では、ポイント制による戸籍取得政策を整備し、戸籍取得の審査で社会保険納付期間や居住期間といった評価項目の点数のウエートを高めること、常住者に戸籍保有者と同様の教育、医療、雇用・起業、社会保障、住宅保障などを提供し、公共サービスの均等化を推進することなどが盛り込まれた。

中国都市・小城鎮改革発展センターの李鉄首席エコノミストは、これらの政策によって各レベルの地方政府は関連インフラ整備や公共サービスの提供に取り組む必要に迫られるが、出稼ぎ労働者や他都市から移動してきた人口による消費、投資の活性化や内需の拡大によって中国経済の発展を促すことが期待されるとの見方を示した(「財経」12月26日)。また、中国社会科学院上海市政府上海研究院の陳新光特約研究員は、今回の戸籍管理制度改革は都市化の進展を踏まえた政策調整であり、中国の都市と農村の二元的構造問題の解消につながると評価した(「紅星新聞」12月28日)。

意見ではこのほか、企業と政府機関などの間の人材移動を強化し、企業や社会団体の人材を党・政府機関、国有企業に円滑に移動させること、評価・奨励制度を整備して人材のキャリアアップを促進すること、貧困地域に特化した就業支援を進めて貧困層の社会的上昇を促し、貧困の世代間連鎖を解消するなどの措置も含まれた。

(注)住宅・都市農村建設部が発表した「中国都市建設統計年鑑2017」によると、2017年末時点で常住人口が100万人以上500万人未満の都市は69あり、そのうち、陝西省西安市、遼寧省瀋陽市、同大連市、黒龍江省ハルビン市、雲南省昆明市、河南省鄭州市、浙江省杭州市、山東省済南市、同青島市、吉林省長春市の10都市で常住人口が300万人を超えている。

(張敏)

(中国)

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