日EU・EPAは欧州市場での販路拡大に不可欠、食品商社の対応

(EU、日本)

欧州ロシアCIS課

2020年01月31日

日EU経済連携協定(EPA)を2019年2月の発効直後から活用する食品商社の神乾(兵庫県神戸市)は、欧州向けにソースなどの調味料や七味などのスパイス、ゆず果汁、地酒、乾麺、粉末わさび、冷凍食品など多様な加工食品を輸出している。フランスやスペイン、イタリア、ベルギーのインポーターが同社商品を輸入、フランス経由でオランダでも販売している。手掛ける商品には、ソースなど混合調味料やしょうゆ(関税7.7%→即時撤廃)、かんきつ果汁(14.4%~15.2%→即時撤廃)など、EPAによる関税撤廃効果が大きい品目も多い。

同社直販部海外課の山本氏に日EU・EPAの利用状況を聞いたところ、もともと発効前から同EPAの存在を認識していたが、現地インポーターの要請も受けたことで、利用に至ったという。同社では、日EU・EPAの適用を受けるために必要な原産地申告文をインボイスごとに作成しているが、インボイス上に直接記載するのではなく、商品出荷後に、原産地基準をクリアできるものについて原産地申告文を企業レターヘッド付きの紙に作成、インポーターへ電子媒体で送付するケースもあるという。同EPAでは、原産地申告文はインボイスなどの一部であることを求めるが、例えば、インボイス上で原産地申告文への参照を明記することで、別紙での作成が認められる(2019年8月1日記事参照)。山本氏は、現地での輸入通関時に、インポーターが別紙で作成するための要件を満たした上でインボイスと併せて提出することで、特恵関税の適用を受けているのではないかと話す。発効当初は具体的な手続きに関する情報が不足しており、日EU・EPA活用セミナーやジェトロの解説書などから情報収集、インポーターとも協力しながら試行錯誤で取り組んだという。継続的に輸出する商品については、初回の原産地申告を繰り返し使用できる制度も知っているが、税関によって対応が異なるケースもあることから、同社では申告文はインボイスごとにその都度作成している。

発効後、日EU・EPAの欧州側認知度も上昇の感触

商社である神乾は輸出品の直接の生産者ではないため、日EU・EPAの活用には生産者との協力が必要だ。ただ、特に欧州向け輸出では、同EPA利用の有無にかかわらず、原材料に関する詳細情報が求められることから、基本的に生産者から原材料に関する情報を入手しており、これが原産地証明の根拠書類となる。必要に応じて、対比表の作成などを生産者に依頼するケースもあるという。原産性判定に当たってはまず、輸出品と使用された原材料1つ1つのHS分類の確認が必要だ。同社では、インポーターに輸出品のEU側での輸入にかかる細分コードを確認するとともに、使用された原料のHS分類も通関業者に相談するなどして確認をとった上で、品目ごとの原産地規則と照合し、同EPAの適用可否を判定する。取扱商品が多いため最初の作業負担が大きいが、一度確認した商品は2回目以降はスムーズに利用できているという。インポーターからのEPA活用のリクエストは、発効後増加しており、現地側でも認知度が高まってきたという感触もある。

日EU・EPA適用による関税撤廃は、同社商品の現地での競争力強化につながる。逆に言えば、高関税品目ほど同EPAを利用しない場合には現地市場で不利になる。山本氏は、発効から1年で欧州での同EPAに対する認知度も高まってきた実感があるとし、「今や日EU・EPAの活用は欧州市場での販路拡大に不可欠」と話す。同社では今後、一般的な食品に加えて、ベジタリアンやビーガン向け、グルテンフリーなど、付加価値のより高い商材の開拓に注力したいと語っている。

(根津奈緒美)

(EU、日本)

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