2020年のGDP成長率は1.7%、緩やかな景気減速が続く見通し

(スペイン)

マドリード発

2019年12月27日

スペイン中央銀行は2019年12月16日に発表したマクロ経済予測PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、2020年の実質GDP成長率を1.7%と予測し、2019年9月発表の前回予測から据え置いた。10月の政府予測の1.8%を0.1ポイント下回った。2022年まで緩やかな減速が続き、2022年の成長率は1.5%となる見通しだ。

底堅い消費・投資が景気を牽引

外需が弱含みの一方で、成長を牽引するのは引き続き内需で、近年の家計・企業の財務状況改善と低金利に支えられ、消費と投資が底堅さをみせると予想される(表参照)。

雇用面では、景気減速と並行して、就業者数(フルタイム換算)の増加率も2020年には1.3%に鈍化する。一方、失業率は継続的な改善が期待され、2020年には前年より0.4ポイント改善の13.8%となる見込み。インフレ率(消費者物価指数上昇率)は、需給改善や賃金上昇、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和などの効果で、2020年は1.2%、2022年は1.6%と緩やかに上昇していくとの見通しだ。

表 主要経済指標

年金の給付水準の調整進まず、財政への影響を懸念

主な下振れリスクとして、米中貿易摩擦の影響拡大に対する懸念が払拭(ふっしょく)されていないこと、秩序ある英国のEU離脱(ブレグジット)プロセスがまだ具体化されていないこと、中東や中南米などの地域での地政学的緊張、といった外部的な不確実要因を挙げている。

一方、内部要因としては、政府の経済政策が依然として不透明で、とりわけ財政赤字抑制のための道筋が具体化されていないことを指摘した。

2020年の財政赤字は、主に年金負担の増大で、従来の見通しよりも0.3ポイント高いGDP比2.1%を見込む。スペインでは、日本の「マクロ経済スライド」と同様に、平均余命などを考慮して年金の給付水準を調整する「持続可能性係数」を2019年から適用する予定だったが、社会的な反発を背景に、適用が最長4年間(2023年まで)延長されている。

財政健全化法により、2014~2018年の引き上げ率が0.25%に固定されていたが、2018年は予算法で1.6%の特例的な引き上げが定められ、2019年も延長予算により同率の引き上げが行われた。中道左派・社会労働党(PSOE)のペドロ・サンチェス首相(暫定)は、急進左派・ポデモス党との連立合意(2019年11月13日記事参照)で2020年に物価スライド制を復活させることを公約しており、今回予測はこの影響を考慮した数値だ。

なお、与野党間の政権樹立に向けた交渉は、大詰めを迎えている。首相信任投票でキャスティングボートを握る、独立派政党のカタルーニャ共和左派(ERC)との間接的な協力の合意間近との報道が相次いでおり、年明けにもポデモス党との連立政権が成立する可能性が高まっている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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