サンチェス首相、急進左派ポデモスと連立合意、議会多数には届かず

(スペイン)

マドリード発

2019年11月13日

スペインの社会労働党(PSOE)のペドロ・サンチェス首相は11月12日、急進左派ポデモス党のパブロ・イグレシアス書記長と連立政権をめぐる基本合意書を締結外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。政権樹立に至れば、スペイン初の連立政権となる。

極右躍進を受けたスピード合意

この基本合意書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは以下の10項目から構成される。「質の高い雇用」「年金システムの維持」「気候変動対策」「中小企業支援、産業振興、デジタル化推進」「文化とスポーツの促進」「尊厳死・安楽死の合法化」「女性の権利向上」「過疎化対策」「カタルーニャ社会の共存」「予算均衡」。また、当地の各紙によると、イグレシアス書記長が社会政策担当副首相に就任することが内定しているもよう。

11月10日のやり直し総選挙(2019年11月12日記事参照)は、4月の前回総選挙後の両党の連立交渉が決裂したことがきっかけとなったが、今回は選挙からわずか2日でのスピード合意となった。極右新興政党ボクス(Vox)の議席急増に対する危機感が合意を後押ししたとみられる。

選挙直後はPSOEと最大野党・民衆党(PP)との大連立も取り沙汰されていたが、他国の経験からも大連立は極右勢力を拡大させる恐れがあるとして断念されたようだ。

サンチェス首相は、政権樹立をめぐる膠着(こうちゃく)状態を打破し、4年間にわたり安定した左派革新政権を維持するとしている。イグレシアス書記長は、PSOEの政権担当経験とポデモスの大胆さをもって、カタルーニャ州との対話と社会正義を実現し、極右に対抗したい意向を示した。合意発表を受け、スペイン株価指数IBEX35は前日比0.87%の下落を記録した。

政権樹立には独立派の譲歩が必要

ただ、この連立では他の協力的な左派政党や地方政党を合わせても、首相信任投票に必要とされる議会多数にはまだ届かず、カタルーニャ共和左派(ERC)をはじめとする独立主義政党の間接的協力が不可欠となる。

しかし、独立問題が再燃して前倒しの州議会選挙の可能性が高まるカタルーニャ州では、独立派政党が中央政権樹立に協力することへの風当たりが強く、ERCとの交渉は困難を極めるとみられている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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