パラグアイとブラジル、2国間自動車協定締結に向け合意書に署名

(ブラジル、パラグアイ、メルコスール)

サンパウロ発

2019年12月27日

パラグアイ商工省の12月5日と9日の発表によると、12月5日に開催された第55回メルコスール首脳会合で、パラグアイとブラジルは2国間自動車協定について2019年内に交渉を終結させる合意書に署名した。発表によると、パラグアイ外務省は12月後半に協定文作成と法的確認、翻訳を行って署名に向けた準備をする。パラグアイ政府は、両国は既に自動車・同部品分野で補完的な関係にあり、法的枠組みを整えることでさらなる関係強化につながることや、メルコスール域内のバリューチェーン発展に資すると強調した。パラグアイ政府は協定を通じて、次世代型自動車開発の投資機会を取り込み、マキラ制度(注)を活用して生産された自動車部品などのさらなる輸出拡大を狙っている。

12月9日にパラグアイ商工省と外務省が行った会見によると、要旨は次のとおり。

(1)ブラジルからパラグアイへ輸出される自動車は協定発効時に関税を即時撤廃。

(2)パラグアイからブラジル向け輸出は、大半の品目で協定発効時に関税が即時撤廃されるが、例外品目についてのみ2020年~2022年の間で段階的に自由化される。

(3)自動車・同部品の原産地規則は、域内調達率(RVC)50%。ただし、以下の場合は例外。

  1. パラグアイで生産される次世代型自動車(電気、ハイブリッド、点ガス、水素など)に適用されるRVCは30%。
  2. 人員輸送車両(バス)に対するRVCは、パラグアイが30%、ブラジルが35%。ただし、関税割当制が導入され、無関税上限枠はそれぞれ1,000台ずつ。
  3. マキラ制度を活用した生産品に対しては、2020~2027年にかけて無関税上限枠(金額ベース)とRVCが設けられ、段階的に上限額とRVCが引き上げられる。

パラグアイでの中古車の扱いについては、安全基準をメルコスールの基準に合わせて強化することが協定に盛り込まれる見込みだ。パラグアイでは中古車の輸入や走行に関する規制が緩く、ブラジルは新車販売に影響を及ぼすとしてそのことを問題視していた。一方、パラグアイでは低価格の中古車に対する国民のニーズは高く、中古車の輸入・販売事業への従事者も多いことから、国内では中古車の輸入制限に反対する声が多かった。そのため、この問題が自動車協定の大きな障害となっていたが、今回、輸入自体は制限しないものの、安全基準を強化することで妥結した。

パラグアイ政府は10月25日にアルゼンチンとの2国間自動車協定に署名しており(2019年11月5日記事参照)、今後はウルグアイとの交渉を予定している。ブラジルとの自動車協定はメルコスール域内の自動車・同部品分野のサプライチェーンにパラグアイを組み込む重要なツールと認識している。2020年上半期はパラグアイがメルコスール議長国を務めることになっており、メルコスール域内の自動車産業政策を重要項目として扱うことが見込まれる。

(注)パラグアイの税優遇制度の1つで、これを活用すると、輸出目的として輸入する原材料や部品、機械設備も含め、関税その他の税金支払いが免除される。

(古木勇生、松平史寿子)

(ブラジル、パラグアイ、メルコスール)

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