江蘇省の工場爆発事故を教訓に、生産の安全性の取り組みを強化

(中国)

上海発

2019年12月02日

江蘇省で3月21日に発生した化学工場の爆発事故では、78人が死亡、76人が重傷を負い、直接の経済損失額は19億8,600万元(約297億9,000万円、1元=約15円)に上った(「新華社」11月15日)。これを受けて、江蘇省で化学工業メーカーの閉鎖・撤退の動きが続いている(2019年10月1日記事参照)。

また11月15日には、この事故の原因と関係者の処分が発表された。直接の原因は、爆発事故を起こした江蘇天嘉宜化工が長期間にわたり、違法に硫化廃棄物を古い固体廃棄物倉庫内に貯蔵した結果、同廃棄物の持続的な温度上昇によって爆発事故が発生したことにある、としている。江蘇省の樊金龍常務副省長と费高云副省長らが監督責任を問われて処分され、爆発事故を起こした江蘇天嘉宜化工の総経理らが危険物質の不法貯蔵などの複数の罪に問われている(「新華社」11月15日)。

さらに11月23日には、この爆発事故を教訓として、国務院安全生産委員会が「全国安全生産集中改善工作方案」(以下、方案)を発表した。2020年2月末までの3カ月間で、全国の危険化学品などの重点産業分野において生産の安全性について検査、改善を実施するとしている。

11月26日には、江蘇省南京市で江蘇省安全生産特別改善指導会議が開催された。特別改善指導は3つの段階に分けて行われる。第1段階は、2019年11月26日から2020年2月末までの3カ月を集中指導期間として、指導グループを各市県に派遣し、改善措置や重点産業などの突出した問題の改善指導を行う。第2段階は、2020年3月から11月までの9カ月間を改善レベルの向上期間として、改善措置の実施を促し、制度の完全な定着、長期的に有効な体制の構築などを実施する。そして第3段階は、審査評価期間として、2020年12月に特別改善指導報告を行うとしている。

今回の方案を実施するに当たり、政府は、事故件数、重大事故などは減少しており、大部分の地域と産業分野では安全生産状況が改善している一方、安全生産をめぐる状況は依然として複雑かつ厳しいとの認識を示していた。また、同会議開催中の11月26日に、江蘇省張家港市で海竜(張家港)実業の工場から火災が発生(「輪胎世界網」11月27日)しており、安全生産をめぐる政府の改善行動は強力に続けられるものとみられる。

(高橋大輔)

(中国)

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