9月の貿易赤字、前年同月比で16%減の31億ドルに縮小

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月14日

フィリピン統計庁は11月6日、2019年9月の貿易収支が31億1,947万ドルの赤字となり、前年同月比で16.2%縮小し、前月では16.5%拡大したと発表した(図参照)。2019年1月から9月の貿易収支は280億924万ドルの赤字と、赤字幅が前年同期比で8.1%減となった。

図 フィリピンの貿易動向

9月の赤字幅が前年同月より縮小した要因として、全輸出金額の60.9%を占める電子製品が3.8%増加したことが挙げられる(表1参照)。電子製品の中でも全輸出金額の46.3%、電子製品の輸出金額の76.0%を占める部品/デバイス(半導体)が5.4%増加したことが寄与した。また、消費者用電子機器(47.2%増)、オフィス用品(24.9%増)、カーエレクトロニクス(8.8%増)の輸出増も影響した。そのほかでは、バナナが55.5%増、その他鉱物製品が89.6%増となった。

表1 フィリピンの輸出統計

一方で、9月の輸入が前年同月比で10.5%減少したことも、貿易収支の改善につながった(表2参照)。鉄鋼が3億569万ドル(46.8%減)、鉱物燃料、潤滑油、関連物質が10億9,217万ドル(14.5%減)、輸送機器が9億4,861万ドル(7.8%減)となった。2019年9月にサウジアラビアの石油関連施設が攻撃された事件や、国家予算の成立の遅れなどによる政府の大規模インフラ開発プロジェクトの遅延の影響がみられる。

表2 フィリピンの輸入統計

9月の輸出先を国・地域別でみると、多い順に日本が9億5,706万ドル(前年同月比19.1%増)、米国が9億415万ドル(7.1%減)、香港が8億6,859万ドル(5.3%増)、中国が7億8,024万ドル(0.9%増)となった(表3参照)。2019年1月から9月までの輸出の合計額では、米国が前年同期比7.4%増の85億6,883万ドルで首位だった。米中貿易摩擦の影響で、フィリピンの対米輸出が押し上げられたものとみられる。

9月の輸入元を国・地域別でみると、多い順に中国が21億2,868万ドル(前年同月比9.4%増)、日本が8億3,188万ドル(5.5%減)、米国が6億4,350万ドル(3.9%減)、韓国が6億2,621万ドル(42.8%減)となった。中国は1月から9月までの輸入の合計でも、前年同期比14.4%増の184億1,930万ドルと首位で、輸入元上位5カ国で唯一の増加となった。2016年のドゥテルテ政権発足以降、フィリピンと中国は政治、経済の両面で関係を深化させており、2018年11月に習近平国家主席が初めてフィリピンを訪問。2019年8月にはドゥテルテ大統領が北京で習国家主席と会談し、経済協力強化や南シナ海での天然資源共同開発などで合意した。フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内のリード礁周辺の海域におけるガス共同開発の権益の60%をフィリピンに譲渡し、中国側が40%を保有するという、中国の提案に基づき共同運営委員会を立ち上げた。

表3 フィリピンの国・地域別貿易額上位10位

(坂田和仁)

(フィリピン)

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