在外労働者への消費者ローン供与規制を緩和へ

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月16日

フィリピン中央銀行(BSP)の金融政策委員会は12月1日、在外フィリピン人労働者(OFW)に対する消費者ローン供与の規制を緩和すると発表した。

金融政策委員会はこれまで、特定のビザを保有するOFWにのみ、消費者ローンの供与を許可していたが、原則として全てのOFWに対して消費者ローンを供与することを許可するとした。金融政策委員会は規制緩和の理由について、健全な信用引き受け業務につとめる国内の銀行に対する信頼が前提にあり、規制緩和によってOFWの金融サービスへのアクセスを一層容易なものとし、BSPが取り組む金融包摂(注)プログラムを推進するための規制緩和だ、と説明した。

フィリピンでは、国民の10人に1人に当たる約1,000万人が海外に居住しており、2018年の在外フィリピン人からの送金額が過去最高の289億4,300万ドルに達し、2019年1月から8月までの累計も前年同期比3.9%増の198億800万ドルとなっている(2019年10月28日記事参照)。GDPの約1割に相当するこうした海外からの送金が、フィリピン国内の消費市場を活性化させ、2012年以降7年連続で続いている6%以上の経済成長にも貢献している。

ドゥテルテ政権は、OFWを支援するための各種施策を講じており、OFWがフィリピンで起業する際の資金調達、トレーニング、市場マーケティング、情報収集といった面で政府が支援を行い、よりビジネスがしやすい環境・設備や、税制優遇制度を提供することを規定する「OFWビジネス・インセンティブ法(下院第1440号)」を今国会で審議している(2019年9月6日記事参照)。また、ドゥテルテ大統領は2019年6月に行った施政方針演説(SONA)において、現在、複数の省庁にまたがって所管されているフィリピン人の海外就労に関する許認可権限を、新しく創設する海外雇用省に一元化する方針を示し、労働雇用省(DOLE)が海外雇用省の創設法案を国会に提出した(2019年9月11日記事参照)。

(注)国民全員が基本的な金融サービスを受けられること。ファイナンシャル・インクルージョン。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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