10月の貿易赤字、前年同月比26%減の32億ドル、電子製品の輸出が好調

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月25日

フィリピン統計庁は12月10日、10月の貿易収支が32億5,000万ドルの赤字となり、前年同月から26.4%赤字幅が縮小したと発表した(図参照)。1~10月の貿易収支は312億5,700万ドルの赤字と、赤字幅は前年同期比で10.7%減となった。

図 フィリピンの貿易収支

10月の赤字幅縮小の要因として、全輸出額の56.1%を占める電子製品の輸出が前年同月比で7.0%増加したことが挙げられる(表1参照)。電子製品の中でも全輸出額の41.6%、電子製品の輸出額の74.3%を占める部品/デバイス(半導体)が8.9%伸びたことが寄与した。また、消費者用電子機器(43.8%増)、電気通信(44.8%増)、医療/産業機器(26.9%増)の輸出増が貢献した。そのほか、旅行用具、ハンドバッグが2.6倍、その他鉱物製品が84.9%増となった。

表1 フィリピンの輸出統計

10月の輸入が前年同月比で10.8%減少したことも、貿易収支の改善につながった(表2参照)。鉄鋼が3億6,160万ドル(前年同月比31.7%減)、産業機械・設備が5億1,649万ドル(14.6%減)、鉱物燃料、潤滑油、関連物質が11億2,234万ドル(13.3%減)、一次形状プラスチックおよび非一次形状プラスチックが2億2,706万ドル(11.5%減)、輸送機器が11億6,420万ドル(3.4%減)と軒並み減少した。

表2 フィリピンの輸入統計

10月の輸出先を国・地域別でみると、多い順に米国が10億7,384万ドル(7.9%増)、日本が9億7,168万ドル(4.5%増)、香港が8億8,279万ドル(13.8%増)、中国が8億3,697万ドル(0.9%減)となった(表3参照)。1~10月までの輸出の合計額は、米国が前年同期比7.6%増の96億5,340万ドルで1位となり、2位は日本で88億8,623万ドルだった。

10月の輸入元を国・地域別でみると、多い順に中国が20億8,467万ドル(4.9%減)、日本が9億2,569万ドル(1.3%減)、韓国が6億8,634万ドル(36.7%減)、米国が6億6,064万ドル(10.1%減)となった。中国は1~10月までの輸入の合計値も、前年同期比12.1%増の205億436万ドルで1位となり、輸入元上位6カ国で唯一の増加となった。2016年のドゥテルテ政権発足以降、フィリピンと中国は政治、経済の両面で関係を深化させており、政権が進める大規模なインフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」の下で実施される75の基幹プロジェクトのうち、中国のODAによるプロジェクトが19存在し、その供与総額は5,150億ペソ(約1兆1,330億円、1ペソ=約2.2円)とされる(2019年12月16日記事参照)。こうした潤沢な支援と引き換えに、中国は領土問題でフィリピンに譲歩を求めている。8月にはドゥテルテ大統領が北京で習近平国家主席と会談し、経済協力強化や南シナ海での天然資源共同開発などで合意。フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内のリード礁周辺の海域におけるガス共同開発の権益の60%をフィリピン、中国側が40%を保有するという中国の提案に基づき共同運営委員会を立ち上げた。

表3 フィリピンの国・地域別貿易額上位10カ国

(坂田和仁)

(フィリピン)

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