トランプ米政権による対米投資の審査件数が増加、CFIUS報告書

(米国)

ニューヨーク発

2019年12月02日

米国財務省は11月22日、外国企業の対米投資を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の2016、2017年の年次報告書を公表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。対米投資を行う外国企業は、CFIUSの審査・承認を事前に求める自主的な届け出を増やしており、CFIUSも審査に伴う追加的な調査をトランプ政権発足前に比べて倍増させるなど、対米投資に対する審査が頻発化している。

CFIUSは、外国企業による米国企業を「支配」する投資取引について、米国の安全保障上懸念がないかを審査する省庁横断の組織だ。審査メンバーには、財務省や国防総省、商務省など関係省庁のほか、大統領直轄の国家安全保障会議(NSC)の代表らが名を連ねる。CFIUSが安全保障上の懸念があると判断した投資案件については、最終的に大統領が投資を差し止める権限を有している。トランプ大統領は2017年1月の就任後、外国企業による米半導体大手クアルコムや同業ラティスセミコンダクターなどの買収を阻止している(2017年9月26日記事参照)。

今回発表された報告書によると、CFIUSは2017年に237件の届け出に対して審査を行い、その件数は2016年(172件)から大幅に増加した。国・地域別にみると、中国が最多の60件で、カナダ(22件)と日本(20件)が続く。業種別では、エンジニアリングやコンピュータシステム開発、研究開発を含む専門・科学・技術サービス(40件)のほか、半導体を含むコンピュータ・電子機器製造(27件)、発電所などの電気・ガス・水道事業(18件)が多い。

審査件数の増加は、CFIUSの取り締まり強化を必ずしも意味するものではない。外国企業が事前に自主的に届け出ることによって、CFIUSの承認を得ようとの動きが拡大したとも捉えられる。CFIUSは届け出がない案件を含めて、過去の投資までさかのぼって審査が可能だが、事前届け出が承認された投資については、再審査の対象にならない「セーフハーバー」が適用される。

また報告書によると、審査の結果、CFIUSが必要と判断した場合に行われる追加的な調査の件数も増えており、2017年は172件と2016年(79件)から2倍超となっている。調査が開始されると、CFIUSが最終的に承認する場合でも、知的財産や機密情報へのアクセスを米国民に限定するなどの条件が課される可能性がある。2017年には、CFIUSの審査または調査中の案件のうち24件が、CFIUSが提示した条件を受け入れられないなどの理由で、申請者側により自主的に撤回された。

トランプ政権および米国議会は、中国を念頭に安全保障上の脅威となる対米投資を阻止するため、CFIUSの審査対象の拡大などを盛り込んだ「2018年外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」を2018年8月に成立させた。2018年11月からFIRRMAの一部条項がパイロットプログラムとして試験導入されており、遅くとも2020年2月13日までに最終的な規則が定められて完全実施となる予定だ(注)。

(注)CFIUSおよびFIRRMAの詳細についてはジェトロ報告書を参照。

(藪恭兵)

(米国)

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