インダストリー4.0の国家政策発表から1年、国際貿易産業省がサミット開催

(マレーシア)

クアラルンプール発

2019年11月22日

マレーシア国際貿易産業省(MITI)は10月30、31日、クアラルンプール市内で「インダストリー・フォワード・サミット(Industry 4WRD Summit)」を開催した。インダストリー4.0導入に向けた国家政策「Industry 4WRD」(2018年11月26日記事参照)発表1周年の節目に、進捗状況やインダストリー4.0技術を実際に導入する地場企業の経験を共有し、さらなる政策の推進を目指すことが目的だ。

準備評価に約360社が承認

ダレル・レイキンMITI相は冒頭のスピーチで、2019年は約1億1,200万リンギ(約29億1,200万円、1リンギ=約26円)をこの国家政策実施に配分したと述べた。具体的には、インダストリー4.0の導入に当たり、生産現場の準備状況を診断する準備評価(RA)の実施、技術導入の経費に対する補助金の給付、工業地域の高速ブロードバンドの普及などがある。2020年は2019年に引き続いてRA、技術導入、人材育成に力を入れるという。

地場中小企業に対して政府が費用を補助して行うRAは、2019年に500社、2020年はさらに450社への実施を目指す。2019年は713社から申請があり、361社が承認された(10月30日時点)。RAを実施する評価機関はマレーシア標準工業研究所(SIRIM)、マレーシア自動車・ロボティクス・IoT(モノのインターネット)研究所(MARii)、マレーシアマイクロエレクトロニクス・システム研究所(MIMOS)の3機関だが、評価機関の数を増やして強化する意向だ。

写真 Industry 4WRD Summit会場の様子(ジェトロ撮影)

Industry 4WRD Summit会場の様子(ジェトロ撮影)

段階的な導入が不可欠

地場企業が自社のインダストリー4.0導入の経緯を紹介するプログラムでは、マレーシアの大手電子機器受託サービス(EMS)企業イナリ・テクノロジーズが登壇した。会場から最も多く寄せられた「インダストリー4.0の導入には何から始めるべきか」という質問に対し、ノーラジディ・チェ・アジブ副社長は「リーン生産方式と自動化を進めるのが第一歩」と答え、生産現場をインダストリー3.0〔コンピュータや情報通信技術(ICT)での自動化〕の状態にしてからインダストリー4.0への移行を進めるべきだ、と段階的な導入を強く勧めた。同じプログラムに登壇した食品製造スタートアップ企業ヘクサ・フーズのゲイリー・ガン社長も「ビジネスの拡大段階や目的に合わせ、必要なテクノロジーを導入することで効果が得られる」と自社の経験を語った。

人材育成が課題

インダストリー4.0導入に着実に取り組む企業であっても、一番の課題は人材にあるようだ。ノーラジディ副社長は、サービスプロバイダーに頼るのではなく、自社でエンジニアを育成することの重要性を強調した。イナリ・デクノロージズはインダストリー4.0に掛ける自社予算のうち8割を人材育成に使っているという。特にコーディングやプログラミングができるエンジニアの育成が急務だという。

(田中麻理)

(マレーシア)

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