税制改革第1弾で15社の多国籍企業が既に撤退

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月27日

在フィリピンの海外企業で構成するフィリピン多国籍企業駐在事務所協会(PAMURI)は、2018年1月1日付で施行された税制改革法第1弾(TRAIN 1)によって、既に15社のPAMURI所属企業がフィリピンから撤退したと発表した。11月22日付の地元各紙が報じた。

PAMURIのセレステ・イラガン会長によると、TRAIN 1が施行される以前は、外国企業の子会社、支店または関連会社の統括・連絡・調整センターとしてフィリピンに事業所を登録する場合、地域事業統括本部(ROHQ)または地域統括本部(RHQ)と認められ、ROHQ、RHQが雇用する外国人が受け取る給与や年金、報償、賃金の総所得に対する税率が15%となる税務上の優遇制度があったが、TRAIN 1の施行によって適応されなくなったことが理由だという。フィリピンから撤退した15社の社名は明らかにしなかった。

フィリピン政府はTRAIN 1によって、全納税者の約99%が実質的に減税対象となる個人所得税の税率改定を行ったが、ROHQやRHQで勤務する外国人の多くは上位1%の高所得者に該当すると考えられ、15%の個人所得税率は年間課税所得が800万ペソ(約1,760万円、1ペソ=約2.2円)を超えると35%になるとされた(2018年3月28日記事参照)。

イラガン会長は、ROHQやRHQの認定を受けている外資系企業の多くは世界中に幅広いネットワークを有する多国籍企業のため、より良い税制優遇制度を持つ国に容易に移転する傾向があるとした。さらに、国会で審議されている税制改革法第2弾(CITIRA)法案についても懸念しており、ROHQやRHQが現在享受している税制優遇制度である地方政府の地方税の免除や、通常30%とされている法人税を10%とする優遇税制を見直す内容となっているCITIRA法案の行方によっては、さらに多くの外資系企業がフィリピンから撤退すると警鐘を鳴らしている。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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