研究開発機関CSEM、ビジネスデー 2019で研究成果をアピール

(スイス)

ジュネーブ発

2019年11月21日

スイス・バーゼルのコングレスセンターで11月12日、電子・ナノテクに関する官民研究開発機関CSEM(Centre Suisse d'Electronique et de Microtechnique)が研究成果を産業界に発表するビジネスデー 2019外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが開催された。

今回は「デジタル空間におけるディープテック(注)(ディープテックがデジタル社会に果たす役割)」をテーマとして、CSEMが強みを持つ精密機械や極小加工技術、低電圧デバイス、バイオ、人工知能(AI)技術などの研究成果をアピールする内容で、製造業・研究開発機関を中心に約300人が参加した。2018年創設されたデジタル化に取り組む中小企業表彰では、産業用バネを製造するフェダンファブリック・シュミット(Federnfabrik Schmid)が選出された。

CSEMは、ヌーシャッテル州にあった時計電気工学、ナノテク、時計技術の3つの研究機関が合併して1984年に設立された官民共同の非営利研究機関。同州やジュラ州で盛んな時計産業を背景に、精密機械とナノテク技術を生かし、モノのインターネット(IoT)、ヘルスケア、エネルギー、宇宙産業応用の研究を中心に470人の職員を擁し、206の企業(43カ国)との共同・受託研究を行っている。現在はヌーシャッテル州だけではなく、ムテンズ(バーゼルシュタット州)、チューリヒ、アルプナッハ(オブワルデン州)、ランドカート(シュビーツ州)にも研究拠点を置いて活動エリアを広げており、外国との共同研究も多い。

CSEMの発表によると、CSEMは電気駆動時計(1967年)や、AI研究に必要なニューラルネットの働きをワンチップ上に実装したNNチップ(1997年)を世界で初めて開発するなど、ナノテク・デバイス関係では先進的研究開発を行ってきている。直近では、2019年の「スイス・スタートアップ・アワード」でベストスタートアップ100(2019年9月17日記事参照)の3位となったアバ(ava)も、CSEMとの共同研究成果によるブレスレットでのバイタル測定技術を利用して、避妊や妊活サービスを事業化した。

(注)長期の研究開発と多額の投資を必要とする高度な技術知識であり、精密加工・光学・バイオ・AI・量子計算などを指す。

(和田恭)

(スイス)

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