2020年1月からインフレターゲット政策への移行を開始

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年11月25日

ウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領は11月19日、大統領令第5877号「インフレターゲット制度への段階的移行を伴う金融政策の実施について」に署名、2020年1月から段階的なインフレターゲット政策の導入を決定した。

これにより、中央銀行は2020年1月からインフレターゲットに応じた国内通貨供給量の調整を開始することになる。2019年11月1日時点のウズベキスタンのインフレ率は16.3%(前年同月比)だが、同大統領令では物価安定目標として2021年のインフレ率を10%、2023年のインフレ率を5%とする。インフレターゲット制度導入の目的として、大統領令は「国民の生活水準を改善し、持続可能な経済成長を可能にする経済改革を有効なものとするためにはインフレ削減措置が重要。そのためにはインフレターゲット制度を導入し、定期的な経済発展・公共政策の分析を行うとともに、中央銀行が金融政策に積極的な役割を果たしていくことが最も効果的」と説明している。なお、中央銀行は2019年9月20日、将来のインフレターゲットの導入を目的に、為替介入の抑制を宣言している(2019年8月22日記事参照)。

大統領令では、閣僚会議に対し、インフレターゲット制度の導入に伴う準備としてa.金融・財政・反独占政策の見直し、b.競争市場経済への移行加速のための各経済分野の構造改革・地場製造業の競争力強化、c.料金価格形成の政府介入の逓減、d.銀行システム、預金から投資に向けた金融市場の改革を指示している。

同じく大統領令では、2020年1月から中央銀行のリファイナンス金利(2018年9月以降16%)を下回る金利で、民間銀行が融資を実施することを禁止した(住宅ローン、農家向けローンなどを除く)。2021年1月からは商業銀行が独立して金利を決定する権利が付与され、政府プログラムを実施する場合は特定の利率を政府が補填(ほてん)する形式に移行する。現在はさまざまな政府プログラムが乱立し、2018年の国内のスム建て・外貨建て総融資額の57%の95兆スム(1兆450億円、1スム=約0.011円)が軽減金利を適用されたローンとなっており、中央銀行が設定する政策金利の効果が阻害されていることを、地元メディアは指摘している。このほか、大統領令では、2020年2月1日までに2020~2021年における(公共)料金設定の自由化計画の作成・提出や、政府の財政赤字幅を2022年に向け1.5%(注)を超えない範囲まで段階的に削減することを指示した。

ウズベキスタンでは、外為規制を緩和した2017年からインフレ率が14.4%(2017年)、14.3%(2018年)と高水準で推移する。市中金利は24.3%(2019年9月時点、長期1年以上)となっているが、個人消費や建設部門を中心に資金需要が旺盛で、国内に流通する通貨量(マネーストック、M2)が増加している(図参照)。また、10月に発表された中央銀行のレポートでは、個人の91%が「インフレが進む」と回答しており(2019年9月時点)、引き続き高水準のインフレが保たれる地合いとなっている。

図 マネーストック(M2、2019年10月1日時点)

(注)同大統領令に記載はないが、同国財務省はジェトロに対し「GDP比」と説明している。現在の赤字幅はGDP比で2.7%(11月20日時点)。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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