中央銀行、為替の変動相場制移行に向け介入抑制に着手

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年08月22日

ウズベキスタン中央銀行は8月20日、記者会見を開催し、通貨スムのレート許容変動幅(コリドー)制度の適用終了を発表した。中銀は2018年3月の「金融政策実施・発展コンセプト」の中で、将来的な為替の変動相場制への移行とインフレターゲット政策の導入について言及していた。

中銀の統計では、2019年7~8月にスムの対ドルレートが下落する一方で、外貨準備高が増加傾向を示しており、通貨スムのレート許容変動幅(0.5%)拡大とコリドー維持のための通貨介入(外貨によるスムの買い支え)の抑制を開始していた可能性もある(図参照)。今後、中銀は変動相場制による為替安定化に向けた調整を進めていく。

図 スムの対ドル為替レートとウズベキスタン中央銀行の外貨準備高の推移

通貨スムの対ドル為替レートは8月に入り、大きく(4%)下落した。市場・国民の動揺を収めるため、中銀は8月に為替市場に関する声明を2回発表したほか、今回、記者会見を開催(注1)している。為替レートの下落について、対外的要因としてウズベキスタンと経済的な関係が強いロシア、中国、欧州などの経済成長減速、ロシア・ルーブル、カザフスタン・テンゲ、中国・元などの対ドル為替レートの下落を挙げたほか、国内的要因として旺盛な輸入需要を背景にした持続的な外貨需要を挙げている(注2)。中銀は声明で、スムの対ドル為替レート下落は製造業者の国内外での競争力強化につながるとの前向きな見解を示しているほか、「国内の為替市場の動向を注意深く見守り、対外的ショックの緩和と基礎的経済指標の安定のため、市場メカニズムを活用する」とコメントしている。

併せて、中銀は8月20日、市中銀行が国内で個人向けの外貨現金の販売を開始したと発表した。今後、外貨購入の際には、デビットカードに電子マネーとして入金する手間などが省略され(2017年9月11日記事参照)、一般市民でも身分証明書(パスポート)のみで外貨を購入できる。これにより、個人の外貨購入に関して、ウズベキスタンはカザフスタンやロシアなどの周辺国と同一の環境に到達した(注3)。

(注1)中銀総裁は、通貨切り下げ(デノミ)の可能性については明確に否定している。

(注2)このほか、為替レート下落の要因について、最近の融資額の大幅な伸び(2019年7月31日記事参照)や補助金の支給などで、市中にスムがあり余っているとの見解を示す専門家もいる(ジェトロによるヒアリング、8月16日)。

(注3)非居住者の自然人(外国人旅行者、出張者など)がスムを外貨に買い戻す場合には、外貨をスムに交替した際に交替所で受け取った証明書が必要などのルールが残っているので注意。

(高橋淳、ウラジミル・スタノヴォフ)

(ウズベキスタン)

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