タイ産完成車に輸入制限を検討、フィリピン産たばこ輸入制限への報復措置

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月25日

フィリピン貿易産業省が、タイ産の完成車に輸入制限を行うことを検討していることが明らかになった。11月14日付の地元各紙が伝えた。貿易産業省は、フィリピン政府が問題視し、WTOに紛争解決を申し立てていた、フィリピン産たばこへのタイ政府の不当な課税問題に対する報復措置だとした。

貿易産業省によると、2014年から2018年までの5年間でタイからフィリピンに輸入された完成車は42万8,000台に上り、国別輸入元台数で首位だった。続く2位はインドネシア(31万2,000台)、3位は韓国(10万台)で、これら上位3カ国で全体の8割以上を占める。

フィリピンで新車販売台数首位のトヨタ自動車は、タイから「カムリ」「カローラ」「ヤリス」「ハイラックス」「ウィーゴ」といった車種をフィリピンに輸入し販売する一方で、包括的自動車産業振興戦略(CARS)プログラム(注)に基づき、小型セダン車の「ヴィオス」をフィリピンで製造。多目的車(MPV)の「イノーバ」もフィリピンで生産している。新車販売台数2位の三菱自動車は、「モンテロ」「エクスパンダー」などをタイからフィリピンに輸入して販売する一方で、CARSプログラムに基づいて小型セダン車「ミラージュG4」をフィリピンで製造。また、小型トラックの「L300」もフィリピンで生産している。

貿易産業省は11月に入り、輸入完成車に対するセーフガード発動に向けた調査の申請を受理したと発表(2019年11月14日記事参照)。さらに、CARSプログラムとは別の国内自動車産業に対する新たな優遇(インセンティブ)政策を検討していることを明らかにする(2019年11月25日記事参照)など、国内の自動車産業の保護政策への動きがみられる。

一方で、フィリピン統計庁によると、2018年のタイ向けたばこ輸出額は8,386万ドルで、全体の19.2%を占め国別輸出先で首位だ。また、その多くは、米国フィリップ・モリス・インターナショナルがフィリピンで生産するたばこ製品とされる。

(注)前政権のベニグノ・アキノ政権が、2016年に打ち出した国内での自動車生産を補助するプログラム。国内で新規に生産される四輪自動車3モデルを対象に、2016年から6年間で1モデル90億ペソ、総額270億ペソ(約567億円、1ペソ=約2.1円)を支援するもの。(1)6年間で1車種20万台の生産を行うこと、(2)部品製造のための新規投資または共用検査施設を設置すること、(3)重量ベースで50%以上を国産化すること、を条件にしている。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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