中銀が3回連続の政策金利引き下げ実施、7.50%に

(メキシコ)

メキシコ発

2019年11月18日

メキシコ中央銀行は11月14日、銀行間翌日物金利の誘導水準(政策金利)を25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げて7.50%とした。政策金利引き下げは8月半ば(2019年8月16日記事参照)、9月末に続いて3回連続となる。引き下げ後に通貨ペソはむしろ強くなっており、14日の終わり値は前日比0.3%増、15日は同0.9%増となり、ペソ相場への悪影響は見られなかった。

今回の決定は10月末の米国の政策金利引き下げ(25bp)に追随したかたちだ。中銀の14日付プレスリリースによると、理事会メンバー5人のうち2人は50bpの引き下げを求めていたが、結果として0.25ポイントの引き下げにとどめた。昨今の国際情勢不安や国内の経済政策の不透明感が続く中でもペソレートが安定している背景には、メキシコと米国の間の金利差とペソの実質金利の高さが内外投資家によるペソ買い需要を支えていることがある。中銀は今回の決定では、米国との金利差やペソの実質金利の低下がペソ売り圧力につながることを警戒したとみられる。実際、2016年1月には3.25ポイントだった両国の金利差は2019年9月には6.00ポイントに達しており、同様に実質金利も1.14%から4.75%に上昇している(表参照)。

表 メキシコの政策金利とインフレ率の推移

為替レートは1ドル19ペソ台で安定推移しており、生産者物価、消費者物価も低下傾向にある(添付資料参照)ことから、インフレ抑制のためにこれ以上高金利を維持しておく必要はなく、低迷している景気を上向かせるためにも、より一層の金利引き下げが必要と主張する声は強い。

企業の生産活動への影響は限定的、消費者金融の金利低下に期待

中銀のアンケートによると、2019年第2四半期(4~6月)時点で商業銀行から融資を受けた民間企業は全体の35.5%、開発銀行の融資を受けた比率は5.7%にすぎず、メキシコでは伝統的に銀行融資があまり利用されていない。他方、回答企業の78.5%がサプライヤーの融資を受けたと回答しており、依然としてサプライヤーへの支払いを先延ばしにすることがキャッシュフロー確保の主要手段だ。従って、政策金利を引き下げても短期的に融資が増える見込みはない。

他方、政策金利上昇は消費者金融の金利上昇につながっており、自動車ローンは2年半で2.0ポイント上昇したことから(図参照)、政策金利引き下げがローン金利低下に結びつくことが期待される。2018年の自動車新車販売台数に占めるローン販売比率は68.1%に達していたが、2019年1~9月は59.6%まで低下している。同期間の自動車販売台数全体は前年同期比7.5%の落ち込みだが、ローン販売は10.4%も減少しているため、ローン金利低下を通じた販売活性化が期待される。

図 自動車ローン平均金利の推移

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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