大規模深海油田の入札が低調、生産分与契約などに問題

(ブラジル)

サンパウロ発

2019年11月21日

ブラジル沿岸の深海部に存在する岩塩層下(プレソルト)と呼ばれる大規模油田の開発権をめぐる入札が11月6、7日に実施されたが、低調に終わり、国内で反響を呼んでいる。6日の入札では、4鉱区のうち落札されたのは2鉱区だった。落札者は、1鉱区がブラジル国営石油会社ペトロブラスの単独、もう1鉱区がぺトロブラスと中国国営企業連合のコンソーシアムで、ペトロブラスが権益の90%、残り10%は中国海洋石油(CNOOC)と中国石油天然ガス勘探開発(CNODC)が折半する。7日の入札では、6鉱区のうち落札は2鉱区のみ。落札者は、ペトロブラスが1鉱区、CNODCが1鉱区だった。ブラジル政府は両日の入札で最大1,423億レアル(約3兆6,998億円、1レアル=約26円)の国庫臨時収入を見込んでいたが、750億レアルと半分にとどまった。

入札が低調だったのは、売却基準価格が高額だったことに加え、採掘原油の所有権をめぐり、掘削・開発を行う落札企業とブラジル国家との生産分与契約(Production Sharing Contract、以下PS契約)の内容に問題があったためとみられている。PS契約では通常、企業は探鉱や開発にかかる投下資金の回収を生産物で行い、コスト回収後は残余の生産物(原油)を産油国と企業が一定の配分比率に応じて分け合う。ただ、今回の分与契約では、採掘原油全ての所有権が企業ではなく国家とされていた。また、採掘・開発を行う企業に国家が介入できるとされていたことも、入札が低調な要因となった。

パウロ・ゲデス経済相は11月7日、シンポジウムでの講演で「17社の石油メジャーは入札に来なかった。これは何を意味するか? わが国での投資は非常に難しい」と評し、「政府は入札を行った当時者だが、PS契約が入札を台無しにした」と語った。今回の入札は、ペトロブラスが海底油田に到達する複雑な地層を掘削・生産する揚げ句に、ペトロブラス自身が採掘原油を買うという結果となった。ゲデス経済相は、外資石油メジャーの投資を呼び込むにはより一般的なコンセッション契約の方が適切ではないかとの考え方を示した。コンセッション契約とは、対象鉱区の掘削・生産原油の所有権と掘削・生産権が企業に付与される方式。企業は鉱区から得られる原油などの処分権を持つ一方、国に対しては、ロイヤルティー、法人税、契約金などの支払いというかたちでその利益を還元する。ゲデス経済相の意向を受けて、政府は今後の売却基準価格の見直しとコンセッション契約導入の検討を始めている。

なお、通貨レアルの対ドルレートは、収賄罪で収監されていたルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ元大統領が刑期途中に釈放された政治的混乱と重なり、11月5日終値の3.99レアルから8日終値には4.16レアルに下落した(2019年11月12日記事参照)。

(大久保敦)

(ブラジル)

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