ロシアとカザフスタン、地域協力で一致も農業分野で課題残る

(ロシア、カザフスタン)

タシケント発

2019年11月13日

ロシア・シベリア連邦管区の中心都市オムスクで11月7日、「第16回ロシア・カザフスタン地域間協力フォーラム」が開催された。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とカザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は同フォーラムに出席し、両国の国境地域でのインフラ整備、産業協力、観光振興、環境保護などを進めることで一致した。一方、両国の経済・観光協力で一致した前回会議(2018年11月16日記事参照)とは異なり、今回はカザフスタン側の問題提起が目立つ会議となった。

このフォーラムでプーチン大統領は、カザフスタンとの貿易額が前年比4.5%増加していること、ロシアはカザフスタンの主たる投資国で6,500社以上のロシア系企業が活動していること、7万4,000人のカザフスタン人留学生がロシアの高等教育機関にいることなどを実績として列挙した。

トカエフ大統領は両国の近年の協力実績として、a.貿易・投資、エネルギーに関する協力、b.ユーラシア経済連合(EEU)の枠組みでの経済協力、c.カスピ海の法的地位に関する合意を挙げた。さらに、今後の課題として、さらなる投資誘致と輸出の拡大を挙げ、a.両国国境地域での中国の「一帯一路」イニシアチブや、ロシアとイランを結ぶ「南北輸送路」を念頭に置いた国境検査場の新設と既存インフラの更新、b.ロシア企業によるカザフスタンでの製造拡大、c.EEUによる自由貿易協定(FTA)を利用した第三国向け輸出協力などを挙げた。

一方で、トカエフ大統領は農業分野について「敏感な問題」として言及。小麦に関して両国は世界で10位に入る生産国だが、両者間で頻繁に競争が生じることから、両国農業省による協力、調整が必要と発言した。これは、近年、シベリアの小麦輸出業者が、カザフスタン経由で中東・東南アジア向けに小麦を輸出した場合に、高額な輸送料金を付加されることに不満を募らせていることに対し、同大統領が反応したものとみられる。

また、カザフスタン貿易統合省のバヒト・スルタノフ大臣はロシアのメディアに対し、「カザフスタンの食品・野菜のロシアでのシェアは2~3%だが、ロシア製品(食品)のカザフスタンでのシェアは50%に達している」と述べ、欧米との対立を契機に、ロシア政府が推進した「輸入代替政策」がカザフスタンの食品産業に影響を与えているとの認識を示した。トカエフ大統領も(ロシアとの)第三国向け輸出協力につき「成果は出ていない」と述べ、農業分野を中心に、EEUによる経済統合の恩恵を十分に受けていないとするカザフスタン側の認識を示した。第三国向け輸出に関しては、同大統領は、カザフスタン国内で農業製品を加工・高付加価値化し、中国市場向けに販売する可能性にも言及した。

(高橋淳)

(ロシア、カザフスタン)

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