国連がイラクで事態収束に向けた声明を発表、政治刷新を求める

(イラク)

ドバイ発

2019年11月25日

国連のイラク派遣団は11月10日、イラクで市民による抗議デモが継続し多数の死傷者が出る事態となっていることを受け、問題解決に向けて声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。声明では、イラク戦争後16年間にわたる「進歩の欠如」に対する市民の不満の鬱積(うっせき)が今回の騒乱の背景にあり、これ以上の問題先送りはより深刻な事態につながりかねない旨を指摘。市民・デモ隊の生命の保障と、憲法改正を含んだ政治システム改革の必要性をイラク政府に訴えた。これに連動して、米国大統領府も声明を発表、早急な選挙法改正と総選挙の実施を求めた。

イラク国会の主要会派は10月末、アデル・アブドルマフディ政権への批判を強め(2019年11月1日記事参照)、同首相も辞任の意向を示したと報じられたが、現在は各会派とも現政権を維持するかたちで事態の収束を図っている。シーア派の最高権威であるアリー・シスタニ師が国連派遣団との対話において、国連の声明を支持するとともに、現政権の対応能力についての懸念を表明したと報じられている(ロイター通信11月11日)。選挙日程の見通しは現状では立っておらず、選挙プロセス刷新の方向性も不透明だが、イラク政府は事態打開のために、早期の選挙実施を含めたロードマップを協議していることを、英国系の通信社ミドルイーストモニターが11月18日に伝えた。

経済面への影響としては、11月9日に業務を再開した南部の主要港湾のウンム・カスル港で18日、同港に通じる道路を再びデモ隊が妨害し、往来する車両の半数がブロックされる事態になったとロイター通信が伝えている。11月10日から後ろ倒しで開催が予定されていた同国最大の見本市「バグダッド国際見本市」は、情勢が回復しないことを理由に無期限の延期となっている。

(田辺直紀、オマール・アル=シャマリ)

(イラク)

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