G20による貿易制限、歴史的水準に高止まり

(世界)

国際経済課

2019年11月22日

WTOは11月21日、G20の貿易関連措置に関する第22回モニタリングレポートを発表した。これによると、G20諸国が2019年5月中旬から10月中旬にかけて導入した貿易制限的措置〔輸入制限、輸出制限、その他(ローカルコンテント要求など)からなる。貿易救済措置を含まない〕の件数は28件だった(添付資料参照)。また、同期間にこうした措置の対象となった貿易額は4,604億ドルと、第20回レポートの集計期間(2018年5月~10月)に次ぐ過去2番目の規模となった。

今回の報告書で集計された4,604億ドルという数字のうち、35.5%がインドによる複数品目での関税引き上げ、34.4%が米国による対中追加関税、さらに19.0%が中国による対米報復関税に起因すると、WTOは分析している。同期間にG20諸国は、関税引き下げや通関手続きの円滑化といった貿易自由化措置も36件導入したが、これら措置が対象とする貿易額は926億ドルにすぎず、貿易制限のそれをはるかに下回る。

貿易制限的な動きを受け、世界の貿易も鈍化する傾向にある。WTOが10月に発表した世界貿易見通し(2019年10月4日記事参照)では、物品貿易量の伸びは2019年が前年比1.2%増、2020年が2.7%増と、いずれも前回見通しから大幅に下方修正されていた。貿易制限が広まれば、貿易量の伸び率はさらに縮小する可能性がある。

今回の第22回レポートの発表に際し、WTOのアゼベド事務局長は「貿易制限は歴史的な水準にあり、世界経済の成長や雇用創出、購買力に明確に影響を与えている」とコメントした。2019年の貿易量の伸びがリーマン・ショック時以来の低水準にあること、そしてさらなる貿易制限がこの状況を悪化させることに警鐘を鳴らし、このトレンドを変えるためにはG20諸国の強い指導力が必要だとも提言した。

(吾郷伊都子)

(世界)

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