WTOが世界貿易見通しを下方修正、足元の貿易は全地域で鈍化

(世界)

国際経済課

2019年10月04日

WTOは10月1日、世界貿易見通しの改定値外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。世界の物品貿易量の伸び率(予測値)は、2019年が前年比1.2%増、2020年は2.7%増となり、いずれも4月の発表(2.6%増、3.0%増)(2019年4月5日記事参照)から下方修正された(表参照)。追加関税とその報復措置や、主要国・地域における金融・財政政策の転換による金融市場の不安定化、世界経済の鈍化などが、見通しの引き下げにつながった。また、英国の合意なきEU離脱(ノー・ディール)も、影響は主に欧州にとどまるものの、貿易を下押しする要因として挙げられた。

2019年の見通しについては併せて、物品貿易量の伸び率が前年比0.5~1.6%という幅のある予測値も発表したが、貿易摩擦の激化によっては、この幅を下回る伸び率になる可能性があると指摘している。

表 世界の物品貿易量(実質)伸び率(前年同期比)

足元の貿易動向をみると、2019年上半期の物品貿易量の伸び率は、全ての地域で前年同期に比べ鈍化した。輸出入ともにプラス成長を維持したのは北米(輸出:1.4%増、輸入:1.8%増)と欧州(0.7%増、0.2%増)、その他の地域(0.1%増、2.4%増)で、中南米(1.3%増、0.7%減)とアジア(0.7%増、0.4%減)は輸入の伸びがマイナスとなった。貿易鈍化の要因としては、世界の需要低下が挙げられる。WTOは、特にアジアでの輸入需要低下が、日本や韓国、ドイツなど工業製品の輸出国の重しとなっていると指摘した。また、8月に資源価格が前年同月に比べて12%下落するなど、天然資源でも需要が縮小していると分析した。

(柏瀬あすか)

(世界)

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