ボルソナーロ政権、反政府活動続くチリ問題の波及懸念に備える

(ブラジル)

サンパウロ発

2019年11月06日

閣僚8人が交代する事態に発展したチリでの政府に対する抗議活動(2019年10月31日記事参照)を受け、ブラジルのボルソナーロ政権内に、その影響が何らかのかたちでブラジルにも波及することを警戒する声が出ている。

第1の懸念は、抗議活動で施設などへの一部暴徒化した破壊がブラジル国内でも起こり得るというものだ。ボルソナーロ大統領は10月25日、「あれは抗議でも要求でもなく『テロリスト行為』だ」と指摘。「政府は準備ができている」と語り、国防相と話し合ったことを明らかにした。大統領は、ブラジルは法律と秩序を維持するために憲法142条に基づき、軍を投入する権利を保持しているとコメントし。ブラジルで非合法な抗議活動を行うための準備会合の可能性があるとの報告を受けたことも明らかにしている。28日も大統領は「ブラジルがチリのようになるとは思えないが、あらゆる懸念に備える必要がある」とコメントした。

第2の懸念は、ゲデス経済相が推進する経済改革が格差を拡大させ、チリと同様な事態がブラジルでも発生するとの主張が噴出してくる可能性だ。「中南米の優等生」と言われるチリの経済発展モデルが格差解消につながっていないことが今回の抗議活動の要因のためだ。

加えて、想定内のこととは言え、時を同じくして10月27日の隣国アルゼンチンの大統領選でフェルナンデス氏が当選し、左派ペロン党政権の復活が決まったことも、こうした懸念をさらに強める原因となっている。

チリとアルゼンチンの動きを踏まえて、ボルソナーロ大統領は28日、自身のツイッターで「私を選んだ5,700万人の有権者に感謝する。保守的なブラジル社会の意向を尊重して、わが国を世界の際立った地位に導く目的があることを強調したい」と語り、政権発足10カ月で76万人雇用を増やし、殺人事件を22%減らし8,000人の命を救ったとして、成果を強調した。

社会保障制度改革法案の成立後、経済省では(1)行政改革法案、(2)予算の義務的経費の改善や自動インフレ調整の廃止、(3)資源ロイヤルティー収入の自治体への配分など新法案の提出が検討されている。これら法案の提出で経済省は、ブラジルで進行中の経済自由化への改革が格差を拡大させるものではなく、財政支出を適正化することで不公平な経済社会のゆがみを是正するものだと主張していく方向だ。

連邦下院議会のマイア議長は「ブラジルの近代化は民主主義のプロセスで築かれたもの。経済省の改革法は、閉鎖的で何も意見を言わない議会に提出されるわけではない」とコメント。ボルソナーロ政権になった以降も引き続き国会での法案審議内容が公開され、各党議員による活発な議論や修正を経て法案が可決されてきた実績を訴えている。

(大久保敦)

(ブラジル)

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