米FRB、2019年3回目の利下げ決定、利下げはいったん休止の可能性示唆

(米国)

ニューヨーク発

2019年11月01日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は10月29、30日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利であるフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を、1.75~2.00%から1.50~1.75%に引き下げることを決定した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(図参照)。利下げは2019年に入って3回目(2019年8月2日記事9月24日記事参照)で、前回9月(0.25ポイントの利下げ)以来1カ月ぶり。ジェローム・パウエル議長は記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「世界経済の変動に直面する米国経済を力強く保ち、進行中のリスクに対して保険を提供するため」の措置だとした。

図 政策金利(FFレート)の誘導目標の推移

今回の決定は8対2の賛成多数だった。反対票を投じたのは、前回と前々回も反対していたカンザスシティー連銀のエスター・ジョージ総裁とボストン連銀のエリック・ローゼングレン総裁で、政策金利の誘導目標の維持を主張したとされる。

「景気拡大を維持するために適切に行動する」との記述を削除

FOMCの声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国経済全般の判断については、労働市場は依然として力強く、経済活動は「緩やかなペースで拡大してきた」とし、前回判断を維持した。内訳である需要項目は、「家計支出が力強いペースで増加する」も「企業の設備投資・輸出は依然として弱い」とし、設備投資・輸出に関する判断を前回の「弱まっている」から変更した。

金融政策の判断について、「FF金利の誘導目標の適切な経路を評価するため、経済見通しについて今後もたらされる情報を監視し続ける」とし、前回までの声明文に盛り込まれていた「(景気)拡大を維持するために適切に行動する」との記述などを削除した。パウエル議長は記者会見で、「(現在の)金融政策は良い位置」にあるとし、利下げや利上げなどの政策変更をいったん休止する可能性を示唆した。一方で、「金融政策に事前に設定された道筋」はなく、「経済見通しを著しく再評価すべき事態が生じれば、それに沿って対応する」とし、状況次第では必要な政策を再び発動するとの方針を示した。

ドイツ銀行の米国担当チーフ・エコノミストのマシュー・ルゼッティ氏は、今回のFOMCまでは「FRBが利下げをしないためには経済データの改善が必要と考えられていた」が、今回の声明文からは、今後は「経済データが悪化しなければ利下げは正当化されない」とのメッセージを読み取ることができ、「(追加で)利下げを行うハードルが高くなった」と指摘した(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版10月30日)。

(権田直)

(米国)

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