下院、がんを検出した医療従事者への報奨金支払いに関する法案を採択

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年11月21日

ロシア連邦下院は11月19日、2019年から始まった大規模な予防・健康診断プロジェクト(2019年7月22日記事参照)の一環として、初期段階のがんを検出した医療従事者に一定の報奨金を出す法案を採択した。今後、上院での審議、大統領の署名を経て発効となる。法案によると、施行日は2020年1月1日。

本法案は2019年11月14日の政府会合において、ベロニカ・スクボルツォワ保健相が腫瘍疾病の初期検出促進を促す今後の追加措置として言及。報奨金は、がん疾病が、困難な生活環境にある成人、児童、孤児、未成年に対する健康診断・予防医療検査で確定された場合、500ルーブル(約850円、1ルーブル=約1.7円)を臨床医、救急隊員、健康診断・予防医療検査従事者など(医療機関の長を除く)に与えるとしている。

ロシアでは、がんによる早期死亡による経済的損失が議論されている。ロシアの国家がん医療研究センター、フィンランドのタンペレ大学、世界保健機関(WHO)国際がん研究機関による調査では、がんによる寿命短縮によって、2011~2015年の間にロシアのGDPの0.24%に当たる最大81億ドルの経済的損失が生じ、2030年までに75億ドル(GDP比0.14%)の損失が見込まれるとしている(「コメルサント」紙8月5日)。これが、がんの早期発見に関するロシア政府の問題意識の一部となっているとみられる。

報奨金措置については、がん疾患と診断された場合、患者に恐怖をもたらすこと、過剰な診断、確定診断が後に誤りと判明した際の措置などの問題が指摘されているが、がんの初期段階での発見を促すものとして、前向きに捉えられている(「コメルサント」紙7月29日)。

(秋塲美恵子)

(ロシア)

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